第26話 手と土とト

 【ギギ】を手に持ち、帽子を慰める。泣くと湿るからなぁ。

 爪楊枝が戻ってきた、という事は……【性質変化】が出来るという事だろう。


「マノン機嫌直してよ。性質変えられるっぽいから何か案出してよ。」

、よく考えて変えるんだよ?」

「え? 何が? 【性質変化】が?」


 あらら、外方そっぽを向いちゃった。でも回数は気に留めておこう。

 地面の整地で1回、戻したら2回……午前中で使えなくなりそう。はぁ、整地に使いつつ、しばらく使えそうな性質って何だろ。


「やっぱスコップ? うーん。」

「1回使っちゃったよ?」

「……考えただけで変わるんだもんなぁ。」


 マノンの言葉に思わず手元を見ると、ケースからシャベルの形に整然と並んだ【ギギ】があった。確かに作業には良いんだけど。

 とりあえず【ギギ】の形を考えて変わっては困る。シャベルで離れた場所の土を掘り返して、穴に埋めよう。

 はぁ、何か月かかるんだろ。


シェレシュセレスは掘るだけで良いよ、運ぶのは僕がやるから。」

「すっごい助かる……掘るのは?」

「運ぶの、やめよーかなー。」

「うそうそ! 掘るから!」


 土運びを一輪車や荷車も無しにするなんて考えたくもない。マノンが手伝ってくれるなら掘るだけ——




「ぜぇ、ぜぇ!」


 ——私の認識が甘かった。セレスは非力な少女だ、10分で腕が痛くなり……あ、マメまで! 

 膝が隠れる程度に掘った穴の中で作業を中断し、手を見る私に声がかかる。

 門を肩越しに見ると、ディアが手を振りながら走ってきていた。用事は終わったのかな?


「セレスー、用事終わったー!」

「ふぃ~、ディア、いらっしゃい。」

「また穴掘ってるの?」

「そう、。門の穴を埋めるための土をね。」


 体を伸ばしながら答えた私をディアは不思議そうに見ていた。手伝って欲しい気もするけれど、残念ながら道具が無い。話し相手になってくれるだけでも気が紛れるし。


 日が高くなったし、良い具合に腹も減った。昼食にしようか、とディアに聞くと用意を先行してくれた。土汚れを軽く落とした私に、差し出されたサンドイッチ風のパンを頬張る。

 焼いた肉をパンで挟んだだけ、ではなく甘辛いソースがかかっているみたいだ。ケバブだな、と思っていると、ディアは私の食べかけにかじり付いた。


 満面の笑みで再度差し出してくるディアを見て、顏に赤味が差した。


――――――――――


「何アレ?」

「羨ましいですか?」

「……違うわよ。」


――――――――――

被害

 門前の穴 残り80%

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る