第22話 浮き 帳 抱っこ
「えっと、髪……洗お?」
ディアは顏を横に振り、膝から離れようとしない。夜風で冷えたのか私にくっついてくるので、湯を掛けてあげながら尋ねて3回目。そろそろ湯に浸かっていると言えど、足が痛くなってきた。
お尻に手を回してディアを抱きしめると、少し足が楽になる。たくさん動いたディアからは香ばしい臭いがしていた。私も臭って……よし、許容範囲だろう。
皿洗いの最中、「何かして欲しい事ある?」と聞いた所「一日ギュっとして?」と言われ今に至る。あまり考えずに仕事以外の暇な時間、と答えたが……まさか風呂までとは。
――――――――――
食堂の賄いを貰い一息ついた所で、アンナさんから湯を溜めるから入るよう言われた。
毎日は入れないが、週に一度は共同浴場で入るらしい。火山の近くだから湧くのだそうだ。
ディアと入る時、見ないように——あぁ、柔らかい……。ディア、着替えるの早くない?
え? 私も柔らかい? ありがと。
あれ? 私、いつの間に脱いだ?
ディアの尻尾を追いかける形で、手を引かれ湯船に浸かる。掛け湯をしないで浸かる事に抵抗がある、日本人の性だろうか。
しばらく私の膝の上で座りの良い位置を探していたディアが、静かになったので聞いてみる。
「ディア? 体洗わないで入ったら、お湯が汚くなっちゃうかも?」
「それじゃ、お魚さんたちの食べるものが減っちゃうよ?」
「え? 魚?」
ディアの指の先を見やると、湯を泳ぐ半透明の魚がいる……。ドクターフィッシュ? 透けてる? 骨は?
外枠だけの魚を見て、目が点になっていると、
「水に浸かったまま、体をこすって汚れを落とせば食べてくれるよ。お腹が減っていると、入ってきた人に群がるけれど。」
「ねぇ、マノン? 何か水面が
「ダイジョウブ、モンダイナイ。」
「——ちょ、ディア! どこさわっ、あっ、足に吸い付いてる! マノっ、助けて! あっ。」
湯船から出ようとした私をディアが掴み、私の下半身に魚が群がり……かゆ気持ち良い変な感覚だった。ディアはディアで、かゆみを我慢していたらしい。ごめん、払い除けようとして。
湯船から這う這うの体で抜け出した時には、二人は妖絶な魅力に溢れていたとか何とか。
――――――――――
「温泉ね。」
「ですね。」
「最後に入ったの、いつだっけ。」
「……昨日。」
――――――――――
被害
セレスの心 「……はい。」
ディアの尻尾 「少しかじられた。」
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