第21話 なしなしなし
「セレスー! また追加だよー!」
「ぐっ……はーい!」
食堂の裏で、下げられた木皿を洗う私にアンナさんの声が届いた。一緒に洗ってくれているディアに一言断り、食堂へ戻る。
夕暮れの食堂は、昨日よりも客が多い。口々に私への
お金が無い。
山から溢れた魔獣は、それなりの値段になった。素材として貴重なのだそうだ。
門前の白煙や陥没の復旧にかかる費用が問題で、利益は雀の涙。功労者のディアに奢ってあげるつもりが、どうしてこうなったのだろう。
人手が足りない。
門前の復旧は、すぐに終える事が出来なかった。
門番のおじさんたちも手伝ってくれるらしいが、当事者の私が復旧しなければいけないらしい。解せぬ。
おばちゃんたちは「ほら、私たちは、か弱い乙女だから。」と言っていたが嘘だろう。
後ろで笑ったおじさんたちが椅子を投げられていたし。
【ギギ】が戻らない。
現状、私のアイデンティティとも言える
白煙をマノンと共に処理した後、【ギギ】が元の爪楊枝に戻ってしまった。そして何度試しても性質が変わらなくなってしまった。使用回数の制限は無かったと思うけれど。
漠然とした焦燥感がある。知らず知らずのうちに【ギギ】に依存していたのかもしれない。
空腹を主張する腹を擦り、洗い物を持つ。井戸に戻って、さっさと洗ってしまおう。
ため息をつきながら裏に出た所で、ディアが私に気づいたようだ……聞こえちゃったかな。
「あ、セレス。」
「ディア、休んで良いよ? 私も
「でもセレス……。」
努めて笑顔で言うとディアは言い淀み、食堂へと歩いていった。
小さくため息をつき、気持ち新たに木皿と格闘する。井戸水は冷たい。異世界に来てまで皿洗いをして、借金まで。
何だか少し、少しだけ、泣きたくなった。
「シェレシュ、音を漏れないようにしたよ。」
「……ありがと。」
―――――――――――
「アレは、仕方がないわね。」
「早まった、でしょうか。」
「いずれ直面する問題だもの。乗り越えてもらいましょう。」
「……。」
―――――――――――
被害
門前の陥没 残り87%
借金
銀貨20枚分(セレスは200枚分だと勘違いしている)
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