第20話 さんぷ おふざけ ちみつ

 【性質変化】は、を変化させる能力である。

 セレスは、何か知らんけど色々できる、と考えていた。だからこそ爪楊枝が爪楊枝足らんとする最たる特徴、形そのものを変化させた。


「【性能変化】白煙より重い気体!」


 ほんの一瞬で爆発的に膨張した体積【ギギ】は、約1600倍。粒子の数は20ケタを超えた。

 白煙に向け突き出したはずの【ギギ】は、気化した勢いの大部分でもって門に迫る白煙を飲み込み、一方で反作用によりケースごとセレスの鳩尾に食い込む。


「ぐぼぉぉっ!」

「うにに!」


 セレスは吹き飛ばなかった。否、吹き飛なかった。

 素晴らしいタイミングでディアが抱き留め、踏ん張ってくれたから。

 ありがとうディア……できれば後退しながら、が良かった、かも。他人には見せられない顏になっていた私は、り上がる胃の内容物を必死に止める。

 みためはうら若き乙女なのだ、ぶちまける訳には、いかない。うっぷ。


 口元を覆ったまま、現状を確認する。

 門の向こうの【ギギ】に包まれは大丈夫、かな。くぐもった音とともに少しずつ沈降している。重すぎた?

 門番さんも村人たちも鏡餅のような【ギギ】を見つめ、戸惑っているようだ。

 どうやら村に被害は無いみたいだ。ほっと息をついた時、臭いが気になった。口をゆすぎたい……。


「セレス、すごい。ブワって!」


 脇腹辺りから顏を出し、ディアが褒めてくれる。微笑むだけなのは勘弁してほしい。

 手元から伸びた【ギギ】を回収しなければ、と地面に埋まっていく白煙を見ながら思う。


 あ、陥没したのって誰か戻すの手伝ってくれるかな……。


――――――――――


「何よアレ。」

「小さくする、からの発想ですね。」

「する? 、粒子に。」

「楽しそうで何よりです。かせは掛けておきました。」

「……食えないわね。」


――――――――――


被害

 セレスの鳩尾ほか数か所

 「ゲホ、呼吸すら痛い……。」


補足

 エアバッグの衝撃の数倍で鳩尾を強かに打つていで。


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