第19話 白煙 じわじわ 質と量
白煙が砂埃を巻き上げながら地を這い、迫ってくる。
【ギギ】により発生した白煙は、なぜ霧散しないのか。小屋の床板を溶かした時は、臭いも無く平気だった。運が良かっただけ? 冷や汗を拭う。どこからか、ジュウジュウという音が聞こえてくる。
白煙に触れた雑草が茶色から黒く変色していく。歩くような速度で、じわじわと接近してくる。小屋の近くで見た雲のようだ、と場違いな事を考えてしまう。
おじさんたちが騒ぐ声が大きくなった。門番たちも異常に気付いたらしい。
「毒を出せるなら、毒を回収したり——」
「あの量だよ? 毒
「——そだね……今の私、素手だし。触れないように手を覆う? 500本あるし、もっと大きくても……。」
500本もあるから、と小屋で寝る時に【ギギ】を半球状に配置して寝た事を思い出す。
どうにか半分ほど残すことができれば、吸引と防護を両立できるかもしれない。
……煙を吸う性質になるか、は分からない。
「こんな事になるなら、もっとちゃんと確かめておくんだった。」
「たらればだね~。でも大丈夫だと思うよ? 閉めた門を背にすれば、本数の余裕があるし。」
「おお、お。マノンがまともな事を——」
「白煙を吸着しようとしてるみたいだけど、性質変化では【ギギ】に現象としての吸着をさせられないよ?」
「——魔法詠唱にしか聞こえない……。」
「ちゃんと考えて見なよ
【性質変化】……そも性質って何? ドームにできるんだからくっつくよね。粘性?
でも粘性を持たせても、白煙が村を飲み込んでは、意味が無い。であれば——
「あまり時間ないよー?」
「分かってる。」
【ギギ】を見つめ、素っ気無く返答する私の後頭部にマノンの尻尾が当たる。
白煙に目を向けると、門の間際まで近づいていた。
――質と量を増やさないと!
―――――――――――
「ねぇ、どうなると思う?」
「そうですね……良くて半壊、悪くて隣の村まで、かと。」
「まったく。いくらでも方法は、あるでしょうに。」
「じぃー。」
「……何よ。」
「いえ、何でもありません。」
―――――――――――
被害
カキ・マノン村からマノン山までの地面 約50平方メートル黒化
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