第8話 検査、探査、踏査

 3メートルほどの土壁で囲まれたカキ・マノン村。

 霊峰マノンのふもとに位置し、村人はマノンに感謝しながら暮らしているらしい。カキは麓という意味だそうだ。来訪者がそれなりにいるが、悪事を企む者もいるようで……検査が必要だと。


 検査とは異状や悪い所がないかどうか調べること。


 村の入口で、私は門番さんの指示で高さ2メートルほどの大きな板に手を当て、手元に浮かび上がる質問を見ている。門番さんが言うには、


「一人一人質問が違うから、正直に答えるんだぞ。」


 ということらしい。ウソをつくと、質問が延々に続くとか何とか……。地味だけど確実なのかな。えーっと。


「ここに来た目的は、山にいるのもなぁ、と思って。」


 ピロロン、ピロロン


 ……正解らしい。なんだろう、異世界に来てまで聞きたい音じゃないな。肩を脱力させ


「お、もういいぞ。飯なら、あの煙の出ている所に行ってみろ。宿なら村の中央にあるぞ。」

「ありがと。」


 木造平屋ひらや建ての家ばかりだ。軒数は30くらいか? 

 門番さんから教えてもらった煙の出処でどころへ向かう。良い匂い……煮込み料理かな。


 中を覗くと、大きな台所で野菜を切る音や指示を出す声が聞こえてくる。テーブルと机が沢山たくさんあるから、ここが酒場のような場所なのだろう。

 近くにいたテーブルを拭いている女性に聞いてみる。


「すいませーん。」

「おや、可愛らしい子だね、ちょっと今、薬草を切らしててね。……まーた壁の外へ採りに行かないとねぇ。」

「あの、1食いくらなんですか? お金、持ってないんですが……。」

「なんだい、持ってないなら働いてきな。こういう薬草を探すんだ。1束で1皿だよ。」

「私が集めてきても良いんです?」

「誰が集めたって同じさ。あんたがやらないなら、あたしらの誰かが空き時間に採るだけだよ。お腹減ってるんだろ? ほら、行っといで。」

「わかりました。」


 急いで門番さんの所に戻る。また来たのか、という顏をされたが、事情を話すとすんなり通してくれた。5分ほど土壁沿いに歩いて……この辺で良いかな。ざっと見ただけで点在している事が分かる。パパッと集めようかな。


「マノンも探して。」

「あんな苦い草でも食べれるんだなぁ。あ、そこに生えてる。」

「ありがと。んっしょ。」

「2束は集めないとね。あとでくれるんだよね?」

「……そうだね。」

「……集めてね?」


 マノンの催促を華麗に無視して集めていく。両手いっぱいになるくらいで良いよね。今度からは細かい所も聞くことにしよう。

 根が浅いからだろう、すぐ抜ける。両手いっぱいにして急いで戻る私を門番さんは唖然あぜんとした表情で見ていたが、ご飯のことばかり考えていて、良く見ていなかった。


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「カキフライ食べたい。」

「仕事。」

「カキ「仕事」フ、あぅ……。」

「……あとで用意しておきますので。」

「がんばる!」


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 被害

 村西部の地面 陥没数十か所


 補足

 カキ(kiki)はインドネシア語でふもとから

 薬草と雑草の違いは、葉の裏にあるので、セレスのように「ざっと見て分かる」人は少ない、という設定。

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