第3話 その方法では
小さな揺れを感じて、目を覚ます。薄暗いから日の出前なのだろう。
「戻して、準備運動でもするか。」
準備運動をせずにいきなり動くと、次の日が辛いんだよな……という本音は置いておく。この体でどの程度動けるかを知らないのだ。見るからに
「おっ、思った以上に柔らかいな、ほっ!」
開脚、前屈、体が硬くて今まで出来なかった事ができる。小さな事だがスゴイ。足を180度に開いたまま床に肘をつけられる日が来るとは……。
ポスン
落ちてきたケースを手に取る。柔軟の次はコレだよな。ベッドを軽く片付けて外へ出ようとする。決して床の穴を見ない。決して。ドアは手前に開くタイプなので開けて外へ。
「俺は振り返らない男……今はおんにゃっふ!」(ボフッ)
女だっけ? と言おうとした所で、ドアの向こうに鎮座していた巨大な毛玉に頭から突っ込んだ。野性味のある……じゃない。ドアよりも大きい白い毛玉なんて見たことがない。
軽く押してみると表面は柔らかいが、内部は硬い。生き物なのだろう、ドクッ、ドクッと鼓動を手から感じる。
「なんだ? ドアからは出られないか。窓から出ても良いが……。」
床近くは
……なぜ、私が、外に出るだけなのに、こんなに考えさせられるんだか。
プスッ
「いったぁー!」
びびった。刺した俺が悪い。しかし建物が揺れるような大声で叫ぶとは思わなかった。
巨体が飛び上がり、数メートル遠ざかった。外に出られそうだ。
俺が見たのは、高さ3メートルほどの巨大ウサギ。俺が刺した所をしきりに気にしている。こんな生物がいるのか、と関心を持った。ちょっと涙目になっている青目をこちらに向けて猛抗議してくる。
「痛いじゃないかっ! いつもみたいに
フンス、フンスと鼻息荒く言ってくる。まぁ、いきなり刺したら怒るわな。いつもみたい、とは? 初対面だろうに。
「あー、スマンスマン……っぃ。」(顏を背けながら)
「ついって言ったよ! ついって! 相棒がケガしたら……ってどうしたの? シェレシュ?」
「シェレ、シュ?」
「なんだろ、違和感があるね? クンクン、異常は無さそう?」
「俺に聞かれても……ところで、シェレシュって俺のこと?」
俺の匂いを嗅いで異常を確かめていた相棒ことララビットの『マノン』。キョトンとしていたが、アレコレと教えてくれた。
一人称は「私」だったそうだ。自分の事を「私」と言うようにしよう。
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「うーん、思ったより早く流されちゃったわね……。」
「今世は女性ですから仕方がないかと。回収品の修復をしておきました。」
「ありがと、少し先を視ておこうかしら。」
「仕事してくださいね?」
「……はい。」
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本日の被害
マノンの左足「結構、痛かった!」(HPで言うと4ダメージ)
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