◇乙女は見守り秩序を祈る ……♀

 計画は完璧だった。


 完璧という言葉を使うのはどうも後ろめたいものがあるけれども、とにかく、今日の事に関して手抜かりは無いはずだった。何度も確認はしたし、前々から準備は怠らずに行ってきた。……まあ、悩みすぎて結局、全てが完了し終えたのは昨日のことだったのだけれども。


 寒い。


 冬は、割と好きだった。特に、真っ白な雪。空から雪が降ってくる様はたまらなく綺麗で。自分はちっぽけで、おまけに碌でもないけれど、そういう悲観的な考え自体が馬鹿馬鹿しいのだと思わせてくれるから。そう思えるようになったのは、あの人の所為なのだけれども。


 全部が全部、あの空に吸い込まれてしまえばいい。小さな自分も、あの人も、憂いの満ちた世界もろとも。しかし空は快晴で、やはり雪が降るのは期待出来そうにない。


 猶予は与えられていた。

 だけれども結局のところ、猶予というのは与えられるものではなく自分でどうするか否かなのだ。嫌いなら嫌いでいい、しかし気付きにくいけれども、時間は残酷なまでに万人に平等だ。

 その猶予期間に、私は少しでもましなことを成そうと願い行動している。それが唯一の事実だった。


 ただ今は、あの人の事を思って祈るばかりである。

 私は、白い息を吐いて屋上からその空を見上げた。

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