鏡の中の…

あけましておめでとう!去年より速度は落ちるだろうけどちゃんと書いて行くからよろしくね!


後、そろそろ別の小説も書きたいのでその内別の書き出すかも。


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 屋上に出たリーリャを見つけると、一つの気配がフワフワと彼女に近づいて来た。


「待たせたかしら?」


 虚空に向かって労いながら微笑むリーリャ。箒の隠形を作ったのはリーリャなので、ある程度集中していれば発見は一応できる。


「お勤めご苦労様です、連絡にあった基礎装備とお弁当をお持ちしました」


「ええ、ありがとう」


 箒を一旦屋上に降ろし、箒に増設されたキャリー用の装甲を展開させると中には小さな球体が鎮座していた。


「運搬用逢魔の技術も安定してるみたいね」


「はい、試作品とは思えない出来です」


 その言葉に僅かに困った顔をするリーリャ、本人としてはまだまだこの出来で満足していないのである。


「重量関係がどうしてもネックなのよね、初めから補給せずに壊れるまで飛び続ける事を目指して作ったからパーツ負荷を考えるとどうしても50キログラムが制限になるの」


「でも物資や人材の運搬はこの運搬用の逢魔を使えば良いんですよね?ある程度重量関係は無視しても良いと思いますけど」


 その言葉に眉を八の字にして目をつぶるリーリャ。


「……それだと私や楓姉さんが乗れないわ」


「……あっ、はい…ごめんなさい」


「120キログラムが最終目標ね…楓姉さんが多分85kgだから」


「えっ!?あんなに痩せてるのに!?」

 

「殆ど筋肉よ、腹筋とか凄いんだから」


 内緒にしておいてね?と笑いながらリーリャが逢魔に手を突っ込み、装備を取り出した。コンバットナイフを背に付け、ソウドオフショットガンの取り付けられたベルトを取り付けてショットシェルを一発づつベルトに装填していく。


「よし、と」


 再び逢魔に手を突っ込むと、今度は脈打つ肉塊のような物を取り出し…それをそのまま口に含むと飲み下した。


「あの…なんなんですかそれ」


「私の体は幾つかの怪異のパーツを使用しているの、そういうのは通常の食事ではエネルギーが行き渡らない機関だから…こうやって人工生命体を食べてるのよ」


 喉越しだけは悪く無いわよ?と苦笑いするリーリャとそれに愛想笑いをするしか出来ない魔女。もう一度逢魔に手を突っ込み、今度こそちゃんとした人間のお弁当を取り出す。


 それは小さな小さなお弁当。リーリャは体の機関でエネルギーの大半を生成できる為に、通常の食事は殆ど必要にならないのだ。


「っと、忘れる所だったわ」


 そう言ってリーリャは財布から2万円程をチップ代わりに少女のポケットに入れた。


「えっ?」


「チップよ、日本だとあまり馴染みは無いかしら?」


「い、いえ…その…」


 CLOSEからしっかりとした給金を貰っている上に、幹部相手とは言え自分より年下の少女からお金を施される事に抵抗を覚えたらしいが…リーリャは一度渡したソレを再び財布に入れる事を良しとはしないのだろう。


「気にしなくていいわよ、こうやってお金を撒くのも仕事の一貫だから」


 経済が停滞しないようにと政府から忠告を受ける身でもあるので、こういった所であまりケチケチしているとそれはそれで良く無いのだ。


「は、はい…ありがとうございます」


「貴方も適度に散財してね?でないと国からお小言を貰う事になるわ」


 少々冗談めかしては居るが、本当の事なので…リーリャにも一応は使わなければならないという立場がある。


 実際の所、出費が研究で雑に使うぐらいしか無いリーリャはそろそろマンションの一つでも買おうかと悩んでいたりするのだ。既にクロウから小言を言われそうな雰囲気もあるのを理解しているので、そういった所を考慮して動くのが幹部としての仕事でもあるのだろう。


「また用があったら呼ぶと思うから、最低メイド1人と魔女1人の2人は運搬と連絡要因として待機しておくようにアリサカに伝えておいて」


「はい、わかりました」


「お疲れ様、もういいわよ」


「それでは…失礼します」


 軽く頭を下げて再び箒にまたがる魔女。一気に高度を上げて飛び去ると、雲を越えて見えなくなってしまった。


「乗りこなしてるわね」

 

 そう満足そうにうなずいて、屋上を後にするリーリャ。本当は弁当はさっきの球体で十分なのだが…新しく出来た友人が一緒に食べようと誘って来たのだ。ならば、多少は資源の無駄であると理解していても食べる事は吝かでは無いのだろう。


 そうして屋上を後にしようとした時に…再び遠くに誰かからの視線を感じる。


「…?」


 勘違いではない、彼女の体に残る"ログ"がその事実を認識させている。


「……敵でなければ良いのだけれど」


 見ているだけならばどうでも良いとあるき出す、彼女はその程度には強者としての余裕を持ち合わせているのだから。



 時刻は19:00、下校時刻を過ぎて尚酒呑童子が戻らない状況に、さすがにリーリャが痺れを切らして鏡の中に乗り出す事になった。


「本当にリーリャ一人で大丈夫?」


 鏡に手を触れる瞬間、少し心配そうに呟くコレット。本来なら彼女もこの学校に入学している筈だったのだが…少しばかり横槍が入ってしまい、入学枠が取れないままになっていた。


 別に力技で黙らせても良かったのだが、その方法だと門脇家に迷惑がかかってしまうのでCLOSEとしても対応は比較的慎重に行われたと言って良いだろう。


「1時間以上戻らなかったら楓姉さんとアルフォンソの2人を呼んで対応させて、私も慎重に行動するけれど…場合によっては死ぬ可能性も0じゃないから」


「わざわざ敵の本拠地に乗り込むような事する必要ある?」


「解析よりもこっちの方が時間かからないでしょ?」


「嫌な予感するんだよなぁ…ネビロス預けようか?」


「式神や悪魔を強制的に封じる逢魔だと足手まといになっちゃうわ、貴方も絶対に不用意に入っちゃダメよ?」


 リーリャの念押しに少々不安になりながらも頷くコレット。


「分かった、気をつけてね?」


「ええ、もちろんよ…警備には話をつけてあるけど、貴方もあまり不審な行動を取らないようにね?」


「ちゃんと前で待ってるから大丈夫、その為にゲーム持って来たし!」


 じゃーんと口で言いながら輪転道社のゲーム機を見せつけるコレット。


「それまだ発売してない奴じゃない」


「なんか試供品で貰った!ほら、コレなんかも面白いよ?」


 そう言うと、昼頃葛乃葉が改造していたリストバンドを見せるコレット。


「何それ?」


「なんか戦闘レベル?って言うのが見れるらしいよ、私達みたいに強すぎたりするとあんまり数値が安定しないみたいだけれど、異能初心者向けに販売予定なんだってさ」

 

「……なんでこのタイミングでそんな気になる物出してくるのよ」


 ズズイとコレットに近寄ってリストバンドをいじくり回すリーリャ。


「り、理不尽に凄まれた…」


「これ…楓姉さんも開発に絡んでるみたいね、後でちょっと詳しく調べないと」


「CLOSEでも採用予定って話で、今会社にも幾つか置いてあるよ?」


「本当!?後で頼んで一つ解体させてもらうわ…その前に仕事を終わらせないとだけど」


 そう言って憂鬱そうに鏡に向かいあうリーリャ。


「さすがに酒呑童子が消滅したら繋がってる葛乃葉さんも何か言ってくると思うから大丈夫だとは思うけどねー?強制送還出来ないらしいから現地で調べるのがやっぱり得策なのかな?」


「ま、そういう事よ…後頼むわね」


 そう言って鏡に触れると、体が吸い込まれて消えるリーリャ。


「ん、いってらっしゃい」


 ソレを見送ったコレットは、ゲーム機の電源を入れて早速暇つぶしを開始するのであった。



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