第3話 見限ってきてしまった自分
足跡は公園を抜け、また住宅街へと入っていき迷路のように進んでいく。
僕は足跡を見逃さないように慎重に足跡を追っていく。
足跡はよく見ると同じ道を通らないように進んでいることに気が付いた。
公園の時も自分の足跡を踏まないように綺麗に歩かれていた。自分の軌跡を汚してしまわないように。
それはとても崇高なことのように思えた。
それから足跡は人の少ない所へと向かい始めた。
辺りは住宅街から雪化粧をした木々へと景色を変えていった。
足跡の主が向かっている先が何処なのか僕は察しがついていた。このまま、進んでいけば高台に出れるはず。きっと足跡の主も高台を目指して歩いているのだろう。
僕は足跡の主に会うために足跡を辿りながら高台を目指し始めた。
高台を目指してどれくらい歩いたのだろう。
どんよりとした灰色の雲のせいでいつまでも気温が上がらないせいか僕の手足の先の感覚が無くなってきていた。
長い上り坂で足が上がらなくなってしんどくて息が上がる。冷たい風が僕の頬を切り裂くように流れていく。
何度も歩みを止めそうになりながら僕は高台を目指した。
いつ以来だろうか。こんなに辛いのは……。
社会に出てから壁にぶつかる度に仕事を変えていつの間にか三十歳手前で辛いことから逃げてきていた。
社会が悪いんだと、自分に言い聞かせていつしか努力することを諦めていた。
いつ以来だろうか。こんなに努力しているのは……。
学生の頃は勉強にスポーツも1番になりたくて頑張っていたのに。いつしか実らない努力に嫌気が指して自分を見限ってしまっていた。
いつからだろうか。こんなもんだと自分を見限ってしまったのは……。
長くて寒い散歩ももう終わりが見えてきていた。高台が見えてきていた。
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