第2話 誰かの軌跡
僕は黙々と足跡を残した。誰も居なくなった世界に僕の今までの軌跡を残すかのように。
僕は雪の上に僕の軌跡を残している内にあるものを見つけた。
それは今まで見かけることのなかった誰かの足跡だった。
その足跡は僕の足より一回りも小さくて歩幅の間隔も短いけどそこに確かに人の軌跡を見た気がした。
その足跡の主に興味が湧いてきて僕の軌跡を残すのにも飽きてきていた僕はその足跡を追いかけることにした。
点々と残るその足跡を手掛かりに僕はまだ見ぬ人物を探して歩き始めた。
どんな人物なのだろうか?足跡から見て女性のように感じる。
足跡は駅には向かわず、住宅街を迷路のように進んでいた。
こんな寒い日の朝に一人で何処に向かっているのだろうか。出勤が目的ではないのなら足跡の主はこんな朝から何をしているのだろうか。
考えれば考えるほど僕は足跡の主に興味を惹かれていった。
足跡は迷路のように歩いた住宅街を抜けて公園へと辿り着いた。
足跡は真っさらな雪を踏み消すように踏み慣らされていた。公園の端まで歩いては戻ってくるような足取りで危うく足跡を追えなくなるほどであった。
なんとか足跡を捉えることが出来たのは公園のほとりにある池を眺めていたかのような足跡を見つけたからだった。
公園の池は凍っていて雪が積もっていて神秘的な雰囲気がした。
足跡の主も同じことを考えて足を止めたのかも知れない。
足跡の主が何を考えて何を感じたのか、僕は気付かない内に足跡の主の軌跡を辿り始めていた。
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