死ぬことにした真冬の軌跡
真白世界
第1話 死ぬならクリスマス
いつからだろう?僕が僕を止めたくなったのは……
でも現実的に考えると僕が僕を止めることなんて出来るわけなくて僕が考え抜いた答えは“死”だった。
子供の頃は大人に憧れを抱いているとまではいかないにしてもより良い未来を想像していた。
仕事に精を出していつか結婚をして奥さんと子供が居て幸せな生活を夢見ていた。
でも実際、大人になってみるとそんな誰にでもある当たり前の様な幸せも努力した者が得る幸せだと気付いた。
僕はどうせならもっとも幸せな人が多い日、クリスマスに死ぬことを選んだ。
別に世界に対する当てつけとかではなく、僕の幸せが“死”なのだから同じく幸せを分かち合いたかったからだ。
世界も僕の“死”を祝福するように世間はホワイトクリスマスだと賑わっていた。
僕はそれが嬉しくていてもたっても居られなくなって出掛けることにした。
寒さを凌ぐのに打ってつけの厚手のコートにマフラーと手袋をして僕はアパートを出た。
これが最後になるアパートの姿に何処か別れおしさを感じながらこれから死ぬのに防寒なんてと心の中で自分を笑った。
行く当てなんて元々考えてもいなかったで僕は闇雲に歩いて真っ白な雪景色に足跡を付けることにした。
キュッキュッという足跡に僕はだんだん楽しくなってきていた。
最後の日に日頃できない特別をするそんな感覚がたまらなく美しく感じられた。
どれぐらいの時間が経ったのだろう?
時計くらい持って来れば良かったと少しばかり後悔した。
それにしても人影すら見えないことにいつだって僕を残して賑わっていた世界が僕を本当に取り残して行ってしまったような寂しさを感じた。
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