第6話 赤い糸

コロッケを食べ終わり、無言が続く。

公園には僕らだけで、静けさと寂しさが同居した空間となっていた。


電灯がチカチカと今にも切れそうで、暗闇が歩いて近付いている様だ。


彼女もそんな雰囲気に怖くなったのかもしれん。

自然と僕の手を握った。

僕に手を握り返す。

震えているのが分かる。

次の展開を分かっている。


物語は終わる。

夜がまた朝に変わる様に。

雨が降り止む様に。


僕の恋も終わってしまう。

終止符は僕が打つ。

彼女に打たさせる訳にはいかない。


僕の罪だ。

僕の甘さだ。

君を選んだ僕の甘さ。

君を選び続けれなかった僕の弱さ。


フッと風が吹く。

彼女は身体を僕に擦り寄せて来るが、僕はそれを拒む。

寒い訳じゃない。

分かっていたから、僕は握った手を離した。

離さないと次に進めない。


「 あっ 」


彼女はオモチャを急に取り上げられた子供の様に声を上げ、静かに泣いた。

もう切れてしまった赤い糸を手繰る様に僕を掴もうとする。

その姿は弱々しく儚げだった。


ここで抱き締められたらどんだけ楽だろうか?

ここで全てやり直せたらどんだけ楽だろうか?


でも、駄目だ。


「 ありがとう。ごめんね 」


僕は確かに赤い糸を切った。

もう繋がらない事を知っているのに。

こんな事なら、僕は彼女を救わない方が良かったんじゃないかと、思ってしまう。

今になっては、正解が分からない。

分からな過ぎて、泣いてしまった。


涙が止まらなかった。


こんな僕なのに泣いて良い訳ないのに、涙が湧き出る。


僕は最低だ。


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