第23話 復讐


 公園に沿ったこの細道は、殺人事件が起こったせいで、すっかり人通りが絶えてしまった。

 駅から近道になるという理由で、終電までの通行人は多かった。

 なのに今やこんな深夜に通るのは、野良猫か巡回中の警察官か、変わり者の僕くらいだ。

 犠牲になったのは、部活のあと友達とファミレスに寄って、帰りが遅くなった女の子。年は16才。

 なんでもその日に、意中の男子から告白を受け、いろいろと話が盛り上がったからだ。

 そんな幸福に満ちた帰りに突然、果物ナイフでめった刺しにされてしまった。

 腹や胸や顔を血まみれにして、仰向けになって事切れていた。

 発見者は通りがかった学生というが、女の子が刺されまくって倒れているのを見てさぞ驚いたことだろう。

 犯人はまだ見つかっていない。警察の発表では、犯人の年齢や身長は僕と同じくらいらしい。

 未解決ということで、住民たちは皆、第二第三の殺人事件を恐れているというわけだ。

 おっと、うわさをすれば何とやら……。

 外套を着た制服警官が二人、ライトを向けて本道から入ってきた。僕はサッと電柱の陰に身を寄せる。

 ……。

 どうやら見つからずに済んだようだ。

 夜のしじまに、警官二人の靴音が遠ざかっていく。

 事件当初は町のあちこちに検問が張られ、夜遅くまで聞き込みの刑事が散見された。

 だけど事件が起こって一ヶ月半が経つから、以前ほどの物々しさは減った。

 ……僕は知っている。

 犯人はここから直線距離で、約6km先のアパートにいる。

 周囲の住人はそれに気づいてもおかしくないのに、なぜいまだに見つからないのだろう。

 アパートの住人がほとんどいないせいか。それとも冬の時期だから窓を閉め切っているのが原因だろうか。

 あっ。さっきの警官が戻ってきた。

 ライトを照らしつつ、隠れた僕の前を通り過ぎていった。

 別に隠れる必要はなかったけれど、反射的に電柱に身を潜めた。だってこんな気持ちの悪い姿は、どうしても隠したくなるから。

 犯人は事件の数日後に、僕が見つけて仕返しに呪い殺してやった。

 このまま放っておくと、布団の上で腐り、僕以上の惨たらしい姿になってしまうだろう。

 少し情がわいてきたので早く見つけてあげて欲しい。

 だって、僕の身体はもう無いのだから。


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