僕と天音が付き合うまで その6(それぞれの告白)

「5、4、3、2、1、0」


 時間は12時を過ぎた……これでリンのログイン停止が解除されているはず


 僕はいつもの場所で待つ…………………………そろそろかな?


 特に待ち合わせはしていない、でも必ず来るはず……


 

 来た!!


 友達の欄にインのマークそして直ぐに個人チャットが飛んで来る。


『ルナ~~~~~~~~~~~~~~~~~』


『リン~~~~~~~~~~~~~~~~~』


『今いくね~~~~~~』


『待ってるよ~~~~~』


 いつも来る方向にキャラを向ける……遠くから駆けてくるキャラが小さく見え始める。


 エリアチャットの範囲に入るリン


『会いたかったよ~~~ルナ~~』


『僕もだよ~~リン~~~』


『ううう、ごめんね~~、3日間寂しかったよおおおお』


『僕もだよおおおお』

 本当に辛かった、3日もリンと話せないなんて、2年前僕の修学旅行やリンの家の都合で3、4日イン出来ないなんてあったけど、ここ1年はなかった……精々1日位、3日なんて今や信じられない位の長期間……


『何してたルナ、インしてた?』


『してない、リンの居ないゲームに価値はないから、ずっとリンの事を考えてた』


『ルナ』


『リン、チョッと話したい事があるんだ』


『なあに?』


『ちょっと場所を移動しよう』

 ここだと人がたまに通る、邪魔はされたくない


『うん?』

 僕はリンを連れ湖の方に向かう、町から出てしばらく歩く、途中小物のモンスターが出没するのを倒しつつ湖畔に到着


 特にイベントが無い場所なので人があまり来ない、でも薄暗い湖畔に月明かりが反射して幻想的な雰囲気を醸し出している。



 僕はキャラをリンの正面に向ける。


 キーボードの前で一度目を瞑り心を落ち着かせる、ここからはミスタッチは出来ない、精神を集中する……そして打ち始める……



『この3日間、リンに会えないって事がこんなに辛いとは思わなかった、もしリンがBANでもされて一生喋れないなんて事になったら、僕は耐えられない』


『ルナ、ありがとう私もだよ、3日間辛かった』




『僕はリンにずっと言いたかった事があるんだ』



『え?』



『これを言ってしまったら、リンとの今のこの楽しい日々が無くなるかもって思って言えなかった、でもある人が言ったんだ、信じろって』


『ある人?』


『うん、その人に言われて僕は決心した、この3日間考えに考えて決心した!僕は前に進む!そしてリンを信じる!!』


『え?ルナ?どうしたの?』


『リン聞いてくれ』


『えっと、はい』



『僕は、リンの事が好きです!いつも話しをして、リンのその考え、性格、優しさ、誠実さ、僕は今あなたが居ないと生きていけない位に思ってます、仮にこのゲームが突然無くなったら僕は耐えられない、リンの事は何も知りません、でもリンの事は確かにわかります、だから』




『何処にでも行きます、日本の端でも、いや世界の果てでも、だから、お願いします、僕と会ってください!!』




 ミスタッチはしなかった、でも手が震えて止まらない、目から涙が溢れる、リンの事は信じている、でも拒絶されたら、全てが終わる……僕はリンの返事を待った……なかなか返事が来ない、不安に押し潰されそうになる……でも……リンを信じて待った、その永遠とも言える時間に終わりを告げる……そして目の前に信じられない6文字が並んだ……










『ごめんなさい』




####



 ルナに告白された!!


 3日間会えない辛さが一瞬で吹き飛んだ!!、嬉しい!!、ルナも私の事を好きで居てくれた、嬉しい嬉しい嬉しい!!!


  でもその後に来た言葉に私は動揺した……


『何処にでも行きます、日本の端でも、いや世界の果てでも、だから、お願いします、僕と会ってください!!』


 え!!


 会いたい、ルナに会いたい会いたい会いたい、でも、私もだよと打つ手が止まった……


 怖い……ルナは男の人……ルナの事は大好き、会いたい……でも……


 そして自分のその手を、腕を見る……痩せ細った腕、痩けた頬の自分の顔が暗い風景の映像を映しているディスプレイにうっすら写る



 こんな姿でこんな醜い姿でルナになんて会えない、そして怖い、ルナがではなく、男の人が怖い……


 私は、打ってしまう、逢うのは無理と


『ごめんなさい』


 するとルナからの返信


『そ、そうだよね、ごめんね、変なこと言っちゃって、リン、ストーカーに逢ってるんだもんね、好きなんて言ってごめん、えっと忘れて、あ、僕も忘れた、あはははははは、えっとごめん、今日は落ちるね、えっと、じゃあ』



「え? 違う……、そうじゃない、私も好き、ルナが大好き、告白してくれてありがとうって……、あ!ごめんなさいだけじゃ告白を断ってる事に!……告白は嬉しい、私も大好き、でも会うのは無理」


 そう打たなけれいけなかった、つい動揺してしまった、本当に突然の事に弱い


  いや、そんな場合じゃない!!


「待って、手が動かない、行っちゃう、ルナが行っちゃう、もしかしたら二度と…………いやああああああああああああ」



『まってるな!!』



『まってるな?、うんそうか、ごめん二度と待たないよ、本当にごめん』


 えええええ、ち、違う、違うの、早く打たないと



『ちがうううううううう』



『え?』



 間に合った……ログアウトされてたら一生会えなくなる可能性も……




『いいんだよ、気を使ってくれなくても』


『え?』


『本当にごめんね、もう忘れて』


『違うの』


『リンはやっぱり優しい、いいんだよ僕なんかに気を使わなくても』

  なんか……ルナってちょっとめんどくさい?


『もう! 違うのルナってば!!』


『え?』



『違うの、あのね、私も、私もルナに言いたい事があるの』


『え?』


『私もルナの事が好き、落ち込んだ時や悲しい時、辛いときにルナと喋ると、全部忘れられた、ルナの優しさ、誠実さが好き、ルナの姿は分からない、でもルナの事が好き、だから嬉しかった、ありがとうルナ』


『本当に?』


『本当だよ!』


『僕に気を使って言ってくれなくても』


『もう! 私の事を信じてくれるんじゃなかったの!』

  ルナってやっぱりめんどくさい?


『だってリンがごめんなさいって』


『あ!、そうだった、ごめん』


『やっぱり!!』


『もう違うってば~~ルナって少しめんどくさいよ!!』


『がーーーーーーーーーん』


『あ、ごめん、でも自分でがーーーんって面白いいい』


『面白くないよう、僕どれだけ勇気を出して言ったと思ってるの!!』


『うん、わかってる、ごめんね、ありがとうルナ』


『えっと、ううん、でも、じゃあなんでごめんなさいなの?』



『あのね、会うのは無理って』


『ああ、そうよだよね、さすがにだよね』


『違うの、私もルナに会いたい、でも今は駄目』


『今は?』


『うん、今はまだ無理、こんな姿で、こんな状態でルナに会えない、会ったら嫌われちゃう』


『そんなこと無い、リンがたとえどんな姿でも僕はリンの事が好きだ、好きで居続けられる』


『ありがとう、でも今は駄目』


『リン』


『私ねずっとこのままじゃいけないって思ってた、ルナは私に勇気をくれた、だから私も努力する、いつかルナに会えるように、ううんいつかじゃ駄目だね、夏休み、夏休み中にルナに会う、今決めた! 私頑張る!!』


『本当に?』


『うん!! 夏休みルナに会う!!』


『やった、やった、やったあああああああああああm(。≧Д≦。)m』


『(`・д・´)頑張る』




 #####


 ログアウトした画面に自分が写っている、放心状態でそれを見ていたが段々と現実に引き戻される……


 ルナと夏休みに会う約束してしまった……ってどうすんの私いいいい


「言ってしまった……」

 男性恐怖症の上だいぶ治ったとはいえ、拒食症だった為今でもご飯はあまり食べられない……そしてこの痩せた身体……いくら細い人が良いって言っても限度がある……


「とりあえず5キロ、出来れば10キロは体重を増やさないと……」

 食欲がわかない、最近はゼリーや栄養剤ばかり……


「料理は苦手……でもそれより問題は……」

 一番の問題は……男性恐怖症……これを治さなければ……でもどうやって


 クラスの男の子と喋ったことはない、そして周りも、もう私に話しかけてこない……今さら喋ってなんて言えるわけ無いし無理……でもやらなければ……


 どうしよう、どうしよう、誰か慣らしてくれる男の人……お義父さん?じゃあ駄目だよね年的にも、先生、なんか勘違いされそう………………あ


「!!!」

 一人いる、でもそれこそ今さら……でもやるしかない……自分の為にそして……


「ルナのために、やるしかない!!!!!!!」



 ####



 私は翌日学校から家に走って帰って来た、そして玄関に座る……正座で座る


 心臓が破裂しそう、怖い、でも彼しか居ない、ルナの為なら何だってする、しなくては……緊張で心が壊れそうになる……


 そろそろ足が痺れ始めてきた、でもここで待たなければ、部屋に行くなんて無理


「!!!!!」


 外に人の気配が、そして鍵が開く

 私は背筋を伸ばして扉が開くのを待つ


「!!!」

 彼が私を見た瞬間私は土下座をした!!


「お、おに、お兄ちゃん!! お願いがありまひゅ……」


「ありまひゅ?」


 噛んだああああああああああああああああああ。

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