僕と天音が付き合うまで その5(リンの正体、リンの瞳)

『リン、リン、リン、リン』

 鐘かよ!!

 学校に来ても、頭の中はリンの事で一杯、授業に身が入らない……まあ、元々そんなに身を入れているわけではないけれども……


「わったがっせく~~ん」

 伏せていた顔を上げると、僕の目の前にちょっとチャラい感じの同級生ゆかりが立っている。


「なんか悩んでるみたいじゃない、お姉さんに話してごらん」

 超ミニの制服、太ももが僕の目の前でチラチラしている、僕はなめるように見上げそして……、また机に伏せる


「ちょっとちょっと、無視はないでしょ」


「なんだよお姉さんて、いま、そういう気分じゃないんだ、ほっといてくれよ」


「なによ~また2組の子振ったって聞いたよ」


「また……なんか言ってるのか?」


「まあね~~やっぱり彼氏がいるんじゃないかって」


「それか……僕はノーマルだ!」


「だったら彼女作りなよ~」


「いいだろ、別に……」


「私がまた紹介してあげようか」


「5分でイメージ違うっ言われたから二度といい」


「また変な話をしたからだよ」


「今時昨日のアニメ話しをしただけで、オタ認定されてもね」


ともはそういうイメージじゃないからね~」


「それが嫌なの、僕の顔だけでそんなイメージ持たれても困る」


「その顔で生まれてきた宿命でしょ、贅沢な悩みよね、私より美人な顔で言われると腹が立つよ」


「女で生まれてきたならね」


「もう彼氏作ればいいんじゃない、朋なら付き合ってでみんなコロッと付き合ってくれるよ」


「だーーかーーらー、僕はノーマルだ!!」


「あははははははは、でも、まあ朋と付き合うのは本当に大変だよ、自分より美人な彼氏って結構プライドが傷つくしね」


「じゃあなんで告白してくるんだよ」


「まあ、見せびらかしたいんだろね」


「パンダかよ」


「うーーん、よく言えばブランド物とか宝石とかそんな類い?」


「どっちにしろ人間扱いして貰えないって事だろ」


「まあね~~」


「もういいだろ、ほら授業始まるぞ」


「は~~い、じゃあまたね~~」


「来なくていいいよ……」

 縁が自分の席に戻って行く、ヒラヒラとしている短いスカートをを眺めつつ頬杖をつく……


「あいつとも長いよな~~」

 日下部 縁くさかべ ゆかり僕の事を女友達みたいに扱う中1からの腐れ縁、僕に何かあれば今みたいに茶々をいれに来る……


「ただ、まあ助かってるけどね……」

  こういう雰囲気時には誰も僕に話しかけて来ない、そう言うときに必ず縁が来てくれる。


「彼女か……」

 女の子とは今まで何度か遊びに行ったり、ご飯を食べたり、お茶したりはしたことはある。

 でも正式に付き合った事はない……、なんか話しが噛み合わないんだよね、僕に対するイメージがそうさせているみたい。


「リンなら……」

 僕の容姿を知らないリンなら、そんなイメージを持っていないリンなら、僕と上手く行くんだろうか……


「小説の様に、偶然にこの学校に居たり、このクラスに居たり、そんな事があったら凄いんだけどな~」

 僕は周りを見回す……また何人か僕を見ていた……注目されるのは慣れている……でも……今日の視線は好きではない、この好奇な視線は……



 ####



「思いきってリンに相談してみようか……でも告白されて断って周りから変な疑惑を持たれてるって言うの?」


「でも……じゃあ私が付き合ってあげる、とか言われたり?」

 そんな自分に都合の良いことばかり考えつついつもの通りPCを立ち上げる。


「やった!」

 ゲームを立ち上げると既にリンがインしている、僕はいつもの場所に駆けていった、すると……


『なあなあ、行こうよ、すげえゴールド稼げる所あるんだよ、一緒に狩りにいこうぜ』


『大丈夫です』


『どこかのギルドに入ってるの?うちに入りなよ』


『そういうの興味ないんで』


『えーーそんなんで楽しい?、てか君女の子?』


『俺は男だよ、ネカマって奴だよ、ネトゲに女の子なんて居るわけないだろ』


『はははは、まあそうだよな、知ってたwww』


 っていうチャットが僕の所に……!!!!!


 ちょうど木の下で話していた二人、角度的に僕が見えなかったんだろう……僕は慌てて反対方向に戻った、エリアチャットの範囲から抜ける……今のログが僕の所に残った……僕はその場でキャラを立ち止まらせ、そのログを何度も見つめる……


 間違いなく書いてある、普通の会話と違いチャットはログが残るので聞き間違いとかではない…………お……と……こ…………



 リンが!リンが男!!



『ルナ~~?』

 しばらくその場で立ち尽くしている、リンからの個人チャットが来る。


『あ、いま行くね、いつもの所?』


『うん? そうだよ?』

 わざわざ聞くまでも無い事を聞いてしまい、リンが戸惑っている……ヤバい?

 僕はすぐ近くに居るんだが、少し遅らせてリンの前に行く、さっきの奴は既に居なくいつもの木の所でリンが一人で座っていた。


『こん~~』


『こん、ルナどうかしたの?』


『え?』


『インして居場所を聞くなんて、何かあったの?』

 そう、僕たちはもう毎日の様にこの木の所に来ている、ゆえに、何処にいるなんて聞くことなんて今やあり得ない……やってしまった……


 何とか誤魔化そうと思ったが、メールやラインと違ってチャットはその瞬間に返事を打たないといけない、そしてこのゲーム、かなり遡ってログの確認が出来る、その気になってセーブすれば、すべてのログを保存する事も出来てしまう……


 つまり……現実よりも嘘がつきにくい、嘘をつくとその嘘をいつまでも覚えておかないと、辻褄が合わなくなってしまう……一々過去ログで自分が何を言ったのか確認するなんて不可能だ……


 僕はそれを知っている、リンがログの確認をしているかは知らない……でもそういう覚悟でリンと会話している……僕とリンが会話を始めて約2年、膨大なログが存在している、その気になれば嘘がすぐに分かるかも知れない……そしてそんな事より……僕は出来ることならリンには嘘をつきたくない、誠実でいたい。


『ルナ?どうしたの?ラグってるの?』


『えっと実はさっきここに来たんだ』


『え!』


『そうしたらリンが誰かと話しているチャットが入ってきて』


『聞いてたの!』


『うん、ごめん』


『ち、ちkd違うの、あれはあsのdっじぇ』


『リン落ち着いて、大丈夫僕は信じてるから』


『ちがうのあれはあのひとがしつこいから』

 ゆっくりひらがなを打つリンに少し安心する……でも句読点が無いから素人の小説のように読みにくい……


『わかってるよ、大丈夫、ごめんね立ち聞き、みたいな事をして』


『ううん、きがつかなかったわたしがいけないの』


『でも、ネカマ宣言はびっくりしたよ』


『ああ言えば早く他に行ってくれるから、本当に男の人ってやだ!!』


『えーーー僕も男なんだけど』


『あ!そうだよね、ごめん』


「ううん、いいよ、そういう奴が多いってのは僕もそう思うし」


『ううんルナは違う、ルナは他の人と違うの』


『リン』


『今も嘘をつかないでちゃんと言ってくれた、ルナなら信じられる』


『僕もリンを信じてるよ』


『本当に?』


『本当だよ』


『ほんとに、本当に?』


『ほんとに本当に!』


『本当にわたしが女の子って信じてる?』




『本当に信じてる』


『あーーーーーー、今間があったーーーー』


『え、えええええええ』


『ううう、ルナ信じてないいいいいい』

 リンがキャラをモーションを使い泣かせる。


 僕は汗のモーションを使う


『本当に信じてるって、本当に』


『ルナ!ちょっと待ってて』

 そう言ってリンは離席中の表示にする……



 そうして20分……全然戻って来ない……え?怒っちゃった?

 凄く不安になってくる……


 すると離席中の表示が外れリンが喋り出す。


『お待たせ』


『ああ、帰ってきた、怒っちゃったのかと思ったよ』



『ううん、怒ってないよ、ごめんね』


『良かった』


『えっとね、今から書くアドレスを見て欲しいんだけど、一つ約束して』


『え?』


『あのね絶対に保存しないで欲しいの』


『え?何を?』


『とにかく約束して!』


『え、あ、うん』


『じゃあこれを見て!』

 リンはとある写真投稿サイトのアドレスとパスワードを表示する。


『何これ?』


『いいから見て』


 僕はそのアドレスをコピーしてブラウザーを立ち上げ、アドレスをペーストする。

 サイトが表示され要求されたパスワードを入れると1枚の写真が見れた…………え!!!!


 その写真は、さっきまで離席中の表示がされていたリンと僕のキャラがいるゲーム画面が写っている、それを映しているディスプレイから片目だけ出している女の子らしき人物が……絶妙に頭が切れていて片目だけ写っている……


 片目だけなのでちょっと怖い、でも凄く綺麗な目、そして泣きボクロ……僕はその瞳に魅いられる……



『見た?』



『見てる?』



『ねえルナ見てる?』



『おーーーいルナってばーー』




『あ、ごめん、見た』

 ログが流れている、あまりに見すぎてルナのチャットに気が付かなかった、


『見た?、じゃあ消す、保存してないよね』


『うん』

 凄く勿体ないけど約束だし、でも僕の脳には保存した!


『ごめんね髪の毛ボサボサだし、化粧とかしてないからそれしか見せれない、何よりまだ男の人は怖い、ルナがストーカーなんてする人じゃないってわかってても怖いの』



『ううん、ありがとう、ここまで信用してもらって嬉しいよ、ネットって怖いもんね、それにしても絶妙に目だけってw』


『女の子って判る部分が良かった?ルナのエッチw』


『ち、違うよ~~~』


『ううん、冗談、わたしちょっと痩せ過ぎて、前とだいぶ変わっちゃったの、でも目だけは変わって無いから、元に戻っても目だけは変わらないから見てほしかったの』


『そうなんだ』


『うん、でもゲームのせいで視力はだいぶ落ちちゃったけどね~』


『それは僕もかも~』


『たださ、リン、凄く嬉しかったんだけど大問題があるんだ、言っていい?』


『え!何?何か付いてた?』


『いやそうじゃなくてさ』

  リンは気がついていないだろうけど、物凄い大問題が起きる可能性があった。


『え?なに、ルナ、わたし何かやっちゃった?』


『うん、やっちゃってる、あのね、このゲーム相手にチャットやメールで特定のアドレスをおくったりするのは規約違反でBANの対象なんだよ』


『え、え、えええええええけえっけksかああldjへういえ』


『リン落ち着いて、リン』


『え?やだ、え?わたしBANされちゃうの?え?』


『大丈夫、一回くらいなら警告で済むと思うから、でも僕の為でも、もうしないでね、リンに会えなくなっちゃう』


『えーーーーん、ごめんねええええええ』

  またキャラを泣かせるリン、可愛い……


『謝らなくてもいいよ、リン』


 僕はキャラが泣いているのを見ながら、リンのあの目から涙がポロポロと出ている姿を想像していた。



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