二人のクリスマスその1
「さあ朋ちゃん! クリスマスだよ!」
「えっと突然だね、今そんな季節だっけ?」
「いいのいいの、ちょっと未来の話しって事にしちゃえば」
「辻褄が合わなくなるかも……まあいいや、それで今年はどうする? 去年と一緒でネトゲのクリスマスイベント参加? 今年はなんだっけ? 隠れたサンタを見つけるって奴だっけ?」
「なに言ってるの朋ちゃん! 私たちが付き合って初めてのクリスマスなんだから! 勿論、素敵なディナーに素敵なホテル、そして素敵な一夜を二人で過ごさないと!」
「え!? ま、まさか……そ、そんな……急に」
そうか……ついに……僕を男として認識してくれたって事か……さすが少し未来の話し、確か夏休みが終わって少したった後だったから、3ヶ月くらいだよね? いやあ、色々あったよな、えっと何があったっけ? ありすぎて忘れちゃったよ。
えっと縁に天音の事がバレて、クラスの女子が親衛隊結成して後は……
「朋ちゃん! 二人でドレスアップして行こうね! 朋ちゃんのドレス似合うよな~~真っ赤なドレス、ああ素敵!」
「ですよね~~~~」
「ホテルの予約は終わってるから、今からドレスを買いに行こう!」
「はーーい……」
そして天音とドレスを買いに出かけた。ドレスと言ってもカジュアルな奴だけど、当然いつもとはちょっと違う服の為に、天音は大興奮、私を着せ替え人形の様に色々着せその度に「キャー可愛いいいい」、「キャーー素敵!」 と大騒ぎ……なんかこの3ヶ月で益々酷くなっている気がするんだけど……
####
そしてクリスマス当日、二人でホテルに向かった。
「先にチェックインしてからディナーに行こうね」
「うん、まあそっちの方が」
着替えを持っては行くけど、ドレスアップしたら間違いなくトイレに行けない……大きなホテルだから更衣室あるかも知れないが、更衣室で着替えトイレに行き、また着替えて食事なんて出来る分けないしそもそも男子更衣室で着替えるのが嫌だ。
いつもは巻きスカートを履き、トイレに行くときに外したりと色々工夫をして女装しているんだけど、さすがにワンピースのドレスじゃ無理。かといって女子トイレは入れない……なのでちょっとお金が掛かったけどホテルの部屋を取る事にしていた。
家から電車に乗ること1時間程、私と天音は横浜の高層ホテルの一室、みなとみらいが一望出来る部屋に来ていた。
「うわーーーーー、うわーーーーーー凄い!! 絶景! ひ、人がゴミのようだああああ」
「あはははは」
「ほら朋ちゃんもこっちに来て見てよ~~」
「見てるよ」
「もっとこっちに」
大きな窓に二人寄り添い外を眺める。目の前に帆の形をした某有名ホテル、そして右手には大観覧車が見える。
私と天音はそのまま外をずっと眺めていた。いつまでも飽きないその景色、日がゆっくりと沈み、少しづつ暗くなると共に、所々で灯りがともり始める。
「綺麗……」
「うん……」
日が沈むと景色が激変した。
観覧車は光輝き、周りのホテルやビルにも灯りがともる。大きなクリスマスツリーが何本もあるかの様にキラキラと煌めく。遠くには少し物悲しく港の赤い光がチカチカと見え……何か別世界にいるかの様な錯覚に陥る。
私は天音と手を繋ぐ、天音も握り返してくる。もしここが違う世界だとしても、天音がいればそれでいい、どんな場所に行くことになっても、天音と二人なら何も問題は無い。
「さて、そろそろ行かないと」
「うん、じゃあ着替えよう!」
持ってきた荷物からドレス取り出し着替える。
下着姿の天音が私を見てニッコリ笑う……白い下着が眩しい……
天音は私を男と認識していない、男嫌いだから脳がそう認識させているのか? だから目の前で脱ぐ事に躊躇わない。初めは色々戸惑ったけどもう最近は慣れてきた……慣れって恐ろしい……
私も下着になってドレスを取り出す。ちなみに何度も言うけど、どんな下着を着ているかは絶対内緒なんだからね!
天音は黒のワンピースを着る。天音はとにかく全体的に細いんだけど、特にウエストが細く括れていて凄く綺麗な身体だ……
そして今着ている黒の服、やはり中学生、いつもどうしても子供っぽいんだけど、今日はちょっと大人っぽくて見えて……凄く……綺麗だ。
「天音……綺麗……」
「えへへへ、でも朋ちゃんには負ける」
天音のワンピースはシンプル、細い括れた身体、その抜群のスタイルを強調するように身体にフィットした服。私は逆、所詮は男の身体……細いとはいえウエストは括れていない、骨盤も小さく肩幅もある。勿論胸も無い、なので天音様なシンプルな服は似合わない。
今着ているドレスは、胸元にリボンをあしらい、肩にフリル、スカート部分もフワッとしている物で、スタイルを誤魔化している。
更に赤い色で派手に見せて全体的にも意識を反らして誤魔化している。
そんな対極的なワンピース姿……
「私は……天音見たいにスタイル良くないから……」
「そんな事ない!、可愛いし、綺麗だし、赤凄い似合う。ああん朋ちゃん激かわ過ぎるううううう」
私の姿を見て身もだえる天音……
「い、行こうか」
「うん」
「あ、ちょっと待って、これ着けて」
「これって……」
私は天音にネックレスを見せる。そんなに高い物じゃないけど黒のドレスに凄く似合う、天音凄く似合うと思って買った金色ネックレス。
「クリスマスプレゼント」
「ええ! あ、ありがと……」
「着けていい?」
「うん……」
私は天音の後ろに回り髪を持ち上げた。うなじが凄く綺麗で……ドキドキしながらゆっくりとネックレス着ける。
「可愛い……凄く似合うよ」
「えへへへ、でも朋ちゃん……ネックレスを送るって犬に首輪する様に、貴方を縛りたい、独占したいって意味らしいよ」
「そうなんだ……うん、そうだね……天音を独占したい」
「うん……私は朋ちゃんの物だよ」
「うん……あ、時間だ」
「うん、ああ、お腹空いた~~」
凄く凄く幸せな気分になりながら天音と二人でホテルのレストランに向かった。
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