なんてったってアイドル
「好きです……付き合って下さい」
「ごめんなさい!」
「私と付き合って!」
「すみません」
「俺の……嫁になってくれえ!」
「無理……」
翌朝、通学路にて3人から告白された……ついに来た、縁の予告通りの告白ラッシュ……
今までもあるにはあったが待ち伏せは大抵他校の生徒からで、同じ高校の人からの告白は昼休みか放課後に呼び出される事が多かった。しかし今日は違う、同じ制服を来た生徒から待ち伏せされ告白される、しかも3人から。
告白は3人だったが、それ以外にもいきなりプレゼントを渡される。サインを求められる。写メを取られる。特に酷いのはアドレスを無理やり渡して来る人が続出、断っても無理やりポケットにアドレスを書いた紙を突っ込んで逃げていく……
捨てるに捨てられない紙が数枚ぐしゃぐしゃで入ってる……僕のポケットはゴミ箱じゃない!
当然下駄箱には入りきれない程のラブレター、僕のメルアドは皆知らないから今の所こうするしか無いんだろうけど……
友達は今までいるにはいた……けど、結局僕の容姿のせいなのか、あまり親しい関係にはならなかった。
なぜなら男友達は僕と二人でいると、あいつら出来てると噂され、中には彼女と喧嘩になった者までいたからだ。
僕は孤独だった、ずっと一人だった。だからネトゲに逃げた、ネトゲで友達を求めた。僕の容姿に左右されない、本当の友達を……そして出会った、友達以上の存在に……天音に……
だから僕は宣言したかった。僕は天音と、妹と付き合ってると、皆に全世界に宣言したかった。でもそれは出来ない、天音に迷惑がかかるから。
今の所知ってるのは縁だけ、あいつが言いふらさなければ僕が天音と付き合ってるという事は誰も知らない。縁は多分言わないだろう、それだけは信じられる、信用出来る。
今、天音以外で唯一信用出来る相手は縁だけだ。今の所は……
下駄箱で落ちたラブレターを回収し、そそくさと教室に向かう。さすがに校内ではあからさまに告白してくる者はいなかったが、廊下ですれ違う度に、こそこそと話しをされる……ああ居心地が悪いよ~~。
教室に入ってもそれは変わらない、視線が痛い位に突き刺さる。
その視線をかいくぐり、席に着く。
「渡ヶ瀬君おっはよう~~~」
「ああ、縁か……おはよ」
僕が席に着いた時縁が教室に入って来る。そしてそのまま僕の席に鞄を持ったまま来て挨拶をしてきた。
「あーー朝からげっそりしちゃってる、私が言った通りになっちゃった?」
「ああ、そうだよ……参った……」
「ようやく自覚したか、よし、良いことだ」
「ちっとも良くないよ……」
「まあしょうがない、皆羨ましいんだよ、持てない者のひがみと思って流せばいいのよ」
「そんな……」
本当そんな事言われても、代われるものなら代わって欲しい……
「私はラッキーだけどね、今までは遠慮してあまり長々と話せなかったから、こうやって周りを気にせずに話せるのは嬉しいよ」
「いいのか? 何か言われるんじゃ」
「言ったじゃない、もう不可侵条約は意味が無いって、渡ヶ瀬君に彼女が出来たんだから、もう誰に遠慮する事無く気兼ねなく喋っても良いって事だからね」
「それにしてはクラスの皆は近寄って来ないけど」
「まあ、慣れる迄は時間がかかるよ、高価な物に触れる時は緊張するでしょ?」
「またそれか……」
「そこの所も自覚しないとね」
「なんだよ自覚って」
「まあ、天音ちゃんの事は内緒にしといて上げるから、昨日みたいに私と時々お茶してね」
小声で天音の事を言われ、一瞬周りを気にするも僕の周りには誰もいなく聞かれる事はなかった……だがそれはある意味、縁に弱味を握られているという事を自覚する結果になった。
「ああ、まあ……良いけど」
「やった! 後でライン交換しよう、今まで聞けなかったんだよね~~じゃあ後程」
縁はそう言うと自分の席に行く、周りから女子が一斉に縁の元に……ああ、縁が囲まれている……
遠くから「羨ましい」とか「妬ましい」とか「次は俺がデュフフ」とか聞こえて来る……最後の奴は頼むから来ないでくれ……
そして昼休み……僕はまた来るであろう告白ラッシュに怯えていた。
今日はお昼は食べられないだろうな……
家から持ってきたお弁当を撫でるだけ……どうせ無理だろうすぐに呼び出される……そう思い食べないで身構えていたが……誰も呼び出しに来ない……あれ? と思い外を見ると、なにやら廊下で女子同士が言い争っている。
一体何なんだ? と見ていると、縁が少し慌てて教室に入って来た、そして僕にとんでも無い事を言ってきた。
「渡ヶ瀬君……大変だあ」
あまり大変じゃない口調でそう言ってくる縁……なぜ半笑い?
「何かあったの?」
「うん……クラスの女子皆が」
「皆が?」
「渡ヶ瀬君の親衛隊を結成しちゃった……」
「親衛隊って……そうですか……」
「うん、あはははは、さすがアイドル、なんてったってアイドル!」
「昭和か!」
そう縁から聞いて、とりあえず……今僕が出来る事は一つ……それは…………現実逃避だけ……
さてと……弁当食べるか……
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