奇跡の美少女

 

 私は天音に全てを話した、ここ最近起きた出来事を。

 自分は奇跡の男の娘、学校のアイドル、この先告白ラッシュが始まる。

 そんな事を天音に打ち明けた。はっきり言ってなんだこいつって感じだよね? なにそれ自慢? って思うよね? でも自分はそれを望んでいない、望んでいない以上それは全て迷惑なだけ。


 天音は黙って聞いていた、僕を見つめながら黙って聞いていた。


「そう……」

 全て話し終えると天音はそう呟き目を閉じた。

 そして数分の間そのまま目を閉じた後に突然私に抱きついて来た!



「嫌だ! 駄目! 朋ちゃんは私の物!! 誰にもあげない!! 絶対に別れない!! 好き、好き、大好きだもん、誰よりも大好きなんだから!!」

 そう言って私に抱き着く、強く強く私にしがみつく、私は天音を抱き返した。


「大丈夫だよ、わたしも天音が大好きだから」


「本当?」

 泣きながら私を見つめる天音、その瞳に魅了される。天音って綺麗、美しい、可愛い、いや、そんな言葉では言い表せない。


「本当だよ、信じられない?」


「ううん、朋ちゃんがそう言うなら本当の事だもんね」


「うん」


 私はもう一度天音にキスをした。今度は私から、息が続く限りキスをした。

 奇跡の美少女は私じゃない、ここにいる天音だ。こんなに可愛く美しい人はいない、天音は全部が綺麗だ。顔も身体も心も……


 ゆっくりと唇を離す、天音は少し照れた笑いを浮かべる。いとおしい、愛くるしい、私の中にその言葉が浮かび上がる。


「好きだよ天音」

「私も好き、大好き……朋ちゃん」


 その言葉で安心する。単純な言葉、シンプルに好きって、でもそれが全てだ。




 暫く二人で見つめあう……そして……



「で……どうしよううううう、あまねえええ」

「うん……どうしようううううう、朋ちゃんんん」


 二人の愛は確かめた。お互いの気持ちは確かめた。

 でも……だからってそれは現状なんの解決にもならない……


「とりあえず、嫌われてるわけじゃないって事はわかったからまだ良いんだけど、でも逆に居づらくて居づらくて……」


「うん、私も亀井(仮名)ちゃんに何言われるか怖い、付き合ってるの内緒にしてたし……他にも朋ちゃんファンは一杯いるみたいだし」


「天音が虐められたりしたら……私中学に乗り込むから!」


「だ、大丈夫、わが校に虐めは存在しません」


「本当に?」


「多分?」


「ちょっと暗○の方法とか調べた方が良いかな?」


「いざとなったら二人で女子刑務所に入ろうね?」


「いや、少年院だと……私なんとか女子として入れないかな?」


「多分大丈夫~~それより朋ちゃんの方が心配だよ」


「私は別に虐めとかは……」

 多分……今の取り調べは若干虐めな気もするけど……


「でも逆恨みとか、付き合えないならいっその事とか……私も……朋ちゃん浮気したら……いっそ……」


「し、しないから、浮気なんてしないから! 止めて何? その何かを握り締めて腰からぶつかる様な構えは!」


「え? こうすると確実に仕留められるんだよ?」


「いや、何その知らないの? っていう言い方、知らないよそんな事、なんで知ってるの怖いよ」


「うん……」


「あ……」

 そうか……天音はストーカーに……っていうか仕留めようとしたのか?


「大丈夫、多少の護身術は勉強したから」

 しまった……また思い出させる様な事を……折角忘れかけてたのに、いや……違う……忘れる事なんて出来ないんだ。


「私の事より……天音の事が心配なの……また引きこもったりしないか……」

 折角ここまで回復したのに、休みがちだった学校も毎日行くようになってご飯もきちんと食べるようになって、折角ここまで……


「大丈夫、だって朋ちゃんがいるんだもん、朋ちゃんのご飯美味しいんだもん、来年朋ちゃんと同じ学校に行きたいんだもん、だから私は大丈夫」


「そう……うん、そうだね」


「私がもっと魅力的だったら、朋ちゃんと同じくらい魅力的だったらみんな祝福してくれるのに……釣り合わないって思われちゃうんだろうね」


「そ、そんな事ない! 天音は私よりも綺麗、私よりも可愛い、私よりも魅力的だよ!」


「ありがとう……でもそう言ってくれるのは朋ちゃんだけ……」


「天音……」


「とりあえず、頑張る、みんなに認めて貰えるように私……頑張る。そして皆から祝福して貰えるように頑張る! 朋ちゃんに相応しい恋人になれる様に……頑張るから!」


「そんな……頑張らなくても良いよ、私は皆に祝福なんてしてもらわなくてもいい、私は嫌われてもいい、天音さえいればいい……だから」


「ううん、駄目……朋ちゃんは皆に愛されて欲しい、朋ちゃんは奇跡の人なんだから…………だから私が頑張って朋ちゃんに相応しい女の子になればいいの。そして皆に認めて貰えればいいの、ね? 朋ちゃん」


「天音」


 私と天音は手を繋いだ。ソファーで座りながらお互いに向き合い手を握った。

 何があっても離れない、何があっても別れない、いつまでも一緒に、死ぬまで一緒にと……二人で誓うように手を握りあった。





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