温泉旅行 その2


「うわーーロビー広い、綺麗、うわーーエレベーターが丸見え」

 ホテルに着くと天音が大はしゃぎでロビーを見渡している。


 物凄く広いロビー、グランドピアノで演奏までしてお客様をお迎えしている。


 僕達はフロントでチェックインをすると、丁寧な挨拶をしてきた、案内係のお姉さんに部屋に案内される。


「ご姉妹で旅行ですか~~お仲が宜しいですね~~」


「はい! 超仲良しです、ねえ朋ちゃん」

 僕と握った手を離さずに、案内係のお姉さんに見せつける。


「美人さん姉妹で羨ましいですね~~、はいこちらがお部屋になっております」


 案内された部屋は、とてつもなく良い部屋だった。

 

 和室と洋室の二部屋続きになっていて、洋室は寝室でセミダブルのベットが二つ置かれている。


 和室からは鬼怒川の絶景が見え、そして極めつけは……


「こちらが露天風呂になっております、源泉かけ流しでいつでも入れますので」



「うわーーーーーーーー!」


 鬼怒川の流れ迄見える絶景露天風呂……えええ! 良いの? 高校生と中学生がこんな所に泊まっちゃって……


「お食事は7時から承っております。個室でのお食事となっておりますので、お時間になりましたら、おいで下さい、ではごゆっくり」


 そう言って案内係のお姉さんは部屋を後にする。僕と天音はしばし呆然と部屋の真ん中に立っていた。



「えっと……お茶でも飲もうか」

 そう言って僕は座布団に正座をして、お茶を入れる準備をし始める。それを見て天音は僕の向かいに座る。


 お茶はパックではなく煎茶の茶葉が茶筒に入っていた。僕は急須にお茶を入れポットの温度を湯飲みで下げてから、急須に注ぎ、少し待ってお茶の葉が開いた頃、少しづつ分けて湯飲みに注ぎ天音の前に置く。


「ありがとう朋ちゃん」

 そう言って天音がちびちびお茶を飲む、僕もそれを見て一緒に飲んだ。


「はああああああああ、落ち着く~~~~」

 二人同時にお茶を飲むと、お婆さんの様に同時にため息をつく、ああ少し落ち着いてきた。


 豪華な部屋で上がったテンションを下げるかの如くお茶を飲み気持ちを落ち着かせる。


「ねえねえ、凄い部屋だよね、良いのかな泊まっちゃって」

 それでも天音が興奮気味で話してくる、僕も身を乗り出して答える。


「うん、凄いね、良いんだよねチケット渡したし」


「うんうんお母さんにお土産買っていかないと!」


「景色も良いよね、鬼怒川が一望できるし」

 僕は立ち上がり窓から外を見渡した、眼下には鬼怒川が一望、川は白いしぶきを上げ流れているのが見える。天音も僕の横に来て一緒に外の景色を堪能している。


「えっと……どうしようか、夕御飯まで大分時間があるけど、お土産屋さんとか行く?」


「うーーん、お土産は帰りで良くない?」


「あーうん、そうだね、じゃあその辺に散歩に」

 僕がそう言うと天音が僕の手を握る


「せっかくだから、温泉入らないと……ね」


「あ、うん……えっとじゃあとりあえず大浴場に、あ、ほら屋上露天風呂だって」

 フロントで貰ったパンフに書いてあったのを思いだし天音に言う。


「朋ちゃんと一緒なら行く……」


「いや、ほら、僕男だから、一緒には」


「えーーーでも朋ちゃん一人だと襲われちゃうよ」


「ええええええ、大丈夫だよ、メイク落としてウイッグ外せば」


「えーーそれでも危険だよ~~」


「いや危険て……」


「だからここで入ろ、ね?」

 天音が握っている僕の手をきゅっと強める……



「じゃ、じゃあ別々に……」


「えーーーーーーー」


「だ、だって、そんな急に、心の準備が……あの……恥ずかしいし、えっと」


「あははははは、朋ちゃん可愛いいいい」


「もう天音~~~」


「しょうがないなーー、じゃあ私着替え出したりするから、朋ちゃんお先にどうぞ~~~」


「えっと、うん……じゃあ……お先に」


「いってらっしゃーーい」


 そう言われ僕は脱衣場に向かった、ワンピースを脱ぎ秘密の下着を脱ぐ


 女装時の下着は永遠に秘密です。


 


 洗い場で軽く身体を洗い流し、露天風呂に入る。

 冬だったらもっと気持ち良いんだろうけど……でも景色も良いし最高の気分。


「はあああああああ、最高だ~~~」

 大好きな人と一緒にいられる幸せ、良いのかなって思っちゃう。


「ああ、でも僕ってヘタレだな~~一緒に入ろうっ言えれば、でもさすがにそれは……」


 母さんだって僕を信じて天音との旅行を許してくれたんだろうし……

 僕はそう思い僕は頭を降った。


「僕は天音の彼氏だけど、その前に兄なんだ、天音を守らないとね」

 そう言って僅かに残る煩悩を払う…………ん?


 今……何か物音が…………ま、まさか……

 僕は露天風呂の入り口を慌てて見た。


 カチャリと扉が開き中からタオルを巻いた天音が入ってくる。


「えへへへへへ、来ちゃった」



 ああ、そうだよ、何で疑わなかったんだ、お約束じゃないか……天音を先に入らせるべきだったんだ。

 

 何だかんだ理由をつけて色々言ってたけど、これじゃ期待してたくせにって思われても仕方ないじゃん……


 僕のバカ~~~~!!



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