第27話 あたしの、日常
今日、あたしはファミレスの駐車場の裏手の花壇に腰かけている。中に入る気力をそがれたからだ。
吐き気がして、動悸がして、ここから動きたくない。いや、動けなかった。
見かねた客が従業員に言ったのだろう。店長が出てきた。
「送っていくぞ」
「店は?」
「一時間、休憩もらってきた」
「ごめん」
店長は短く返事をして、あたしを車で運んでくれたが、家は、両隣大合唱の工事中。ため息をつくと、車を走らせて、店長の家に連れてきてくれた。
こじゃれた三階建てアパートの二階が店長の家だった。
「うわぁ、片付いてる」
「普通だ」
さっぱりとして、本当に片付いていた。ただ、戸を開けた瞬間は、男のにおいらしい独特なにおいがしたが、店長が窓を解放したのでそれは薄まった。
「まぁ、ゆっくりしとけ、」
「聞かないんだね」
「聞いて欲しいなら言え、……まぁ、今日は早上がりなんで、あとで聞く」
そう言って、ファミレスのテイクアウトを持ってきていた用意周到さに感心しながら、店長は出かけて行った。
時計の針の音が響く。
カバンが震えて、心臓が跳ね上がった。
カバンの中を見れば携帯が光ってる。画面には、店長から、―眠ければ布団使っていいぞ―という文字。―ありがとう―と短めに返事を打つ。
今日のあたしは、もう、駄目だ。
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