第25話 学生(3) 青春だぁ

 ファミレスの、いつも通りのカウンターに座っていると、四人組の学生がわりと近くの席に座った。

 Wデート。という感じではなく、でも、四人ですることがあるようで、ドリンクバーの注文を素早く済ませ、ジュースを各々取りに行くと、机の上にノートなどを出し始めた。

「もう、マジありえないんですけどぉ?」

 あかりちゃん(仮名)が言った。

「先輩には聞いてた」

 サッカー君(仮名)が言う。

「あの先生は、よくこういう授業をするって有名だよ」

 まぁちゃん(仮名)が言う。

「まぁ、ちゃちゃっとやって、帰ろうぜ」

 てっちゃん(仮名)が言う。

 仮名に悪意はない。ただ、見た目と、話し口調から、明るくて、いわゆる今時の女子高生なのがあかりちゃん。明るいというだけの理由。

 サッカー君は、サッカー部らしいイメージ。実は帰宅部かもしれないが、あたしの中にあるサッカー少年、さわやかなスポーツマン。

 眼鏡をかけ、大人しそうなまじめな感じでまぁちゃん。まじめちゃんはさすがに嫌味だろう。

 てっちゃんは、適当だなぁのてっちゃん。

「てかぁ、どうやって調べるわけ?」

 あかりちゃんのしゃべり方は好きではないな。こういう、甘ったれた話し方する人の腹黒さを、よく知ってるので。

「私、そういうの得意です」

 そうだろうなぁ。と思う。

「じゃぁ、まぁちゃんすべてやってよ」

 あかりちゃんがそういうと、

「それはだめだよ、分担しないと、一人でしたような跡が見えたら、参加しなかったものは点数ないって言ってただろ」

 サッカー君は意外にまじめ

「もう、チョーめんど。チョーうぜぇ」

 ほらぁ、あかりちゃん、自分に興味がないことだとしゃべり方乱暴。

「でも、私、字が下手で、発表とかも苦手で」

「あ、俺わりと字、うまいよ。なんせ、書道段持ち」

 てっちゃんの自慢。マヂか?

 三人が声そろった。

「じゃぁ、資料集めをまぁちゃんと俺(サッカー)でする。字はてっちゃん。あかりちゃんは確か絵がうまかったよね?」

「え?」

「美術コンクール、入賞してた」

「それ、中学の時の話」

 あら、イガイ。

「でもスゲーじゃん。俺、絵、かけなぇし」

「私も無理です」

「ほら、決まり」

「まぁ、いいけど」

「資料集めをするにしても、まず、何をするかによるけど、」

 授業で班で発表でもするのだろうけど、別に仲いいわけではなさそうだ。サッカー君は仕切ることも、人の誘導も上手かった。やる気のなさそうなあかりちゃんと、適当なてっちゃんをうまく誘導し、やる気を起こさせている。

「でも、なんで、仲良しじゃいけないんだろうね?」

 あかりちゃんが、ひとまず段取りが済んだのでと、ジュースを飲んで聞いた。

「先生は、仲がいいと逆にやりにくいって言ってましたね」

「逆に今のほうがやりにくわ」

「多分、」

 てっちゃんが少し間を開けてから、

「知らないから、押し付けれないんじゃない? さっき、あかりちゃんがまぁちゃんが資料集め得意だって言った時、まぁちゃんに全部やらそうとしたけど、サッカー君が止めったしょ? サッカー君が止めなかったら、俺止めたしね。いやいや、点数無くなるのマジ困るわぁって。でも、仲いいと、そういうのやりたがったり、得意な奴知ってるし、仲いいから、適当にみんなでやったみたいな、そんな小細工するだろうってことなんじゃない?」

「確かに、なんか、みんなで分業できた」

「ふぅん、よくわかんなぁい」

「でもまぁ、完成までよろしくっすよ」

 てっちゃんの言葉に、笑いながら三人が、よろしく。と言った。

 青春だぁ。たかだか授業のための行動でも、何かに打ち込むことができるのは、いいことだ。

 はぁ、目の前の記事が、全く減らない。

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