第21話 介護かぁ(2)
盗み聞きして正直面白くない話の中に介護がある。
あたしがこれだけしてるのに、全くいやになるわぁ。という愚痴。これは正直聞きたくない。うちのばあさん(母のことです)がそうだったから。
子供ながらに、ほめてもらいたいのか? 大人なのに。と思った。
大人になって思う。大人って、叱ってもらえないが、ほめてももらえないのだ。ほめてほしかったんだろうなぁ、うちのばあさんも。
ただ、ファミレスの、カウンターの並びに座った人はそうではないようだ。ほめてもらいたいとかではなく、もう、思考が停止している感じがする。
一気に落とされたんだろうなぁ。兆候があれば身構えることもできただろうが、全くなくて、いきなり介護が降ってきた。身構える余裕も構えもないから、パニックになったんだろうなぁ。
「もう、わけわからないでしょ? 妹(旦那さんの妹さん)は両親を引き取れないって、借家だからって。だから、施設が見つかるまで預かってくれというけど、あたしに何ができると思う? あたしがすることなすこと嫌がって、あたしが触ることすらできないのに、それなのに、あたしは暴言を吐かれ続けるわけ? いったい何のために預からなきゃいけないのよ? 違う。もし、施設が見つからなかったら、痴呆の二人をあたしは介護するの? あたしの世話を拒否する二人の世話ってどうするのよ?」
「落ち着いて。知り合いにいいケースワーカー以内が居ないか聞いてみるから。ね? それに、愚痴ならあたしが居るから」
緋郎さんは疲れたように礼を言ったが、愚痴を聞いてくれるより、預かってほしいのだろうなぁと思った。
「急に同居は嫌だよね。……確かに嫌だ。うちは、結婚してからずっと同居だから、もう、慣れというかあきらめだな、無理だもの、あんな人と仲良くなるの」
元木さんの急な告白に緋郎さんが驚いた顔を見せた。
「言ってなかったっけ? うち同居よ。性格の悪い姑でね、性格が悪いというか、あたしから見れば超自己中。台所一つだから、基本あたしがするのだけど、なんか気が向いたら、料理するんだけど下手でね。子供四人育てた人とは思えないほど。しかも、台所すごく汚すの。なんでか解らないけどね。食器洗っても、洗剤残ったままだし、汚れもそのまま。病気でもなんでもなくて、そのくらい死にはしないわよって、言う人。かと思えば、行先全く言わずに旅行へ行くの。ご飯の用事もあるからメールするとね、今沖縄。とかいうの。自由人過ぎてね、あの人に合わすと頭おかしくなるから、そうですかぁ。と、もう諦めてる。いちいち聞くのもあほらしいからね。あの姑が倒れたら、すぐに施設に入れる。だって、今が十分介護してると思ってるから。そのあとまで面倒見れるわけないじゃない」
「元木さんて、意外に、」
「復讐するなら、手のかかるようになってからしようと思ってるのよ。って、思わないと、やってられないもの」
「苦労してるのね」
「緋郎さんとこみたいに、急にってわけじゃないからまだましだと思うわ」
「いやいや、結婚して同居って、ありえないから」
「ほんと、同居って、ありえないよね」
そうだと思う。
その後、二人はケーキを食べて、コーヒーを飲んで帰っていったので、その後どうなったのか気になるけど、どうなったかしらねぇ。
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