第15話 鈴木さんの話し

 まさか、ファミレスで宗教勧誘の場に立ち会うことがあろうとは思わなかった。 それが意外にもあたしを興奮させていて、喉がめっちゃ乾く。

 ウーロン茶、何杯目だろう、お替りすれば、それは出るものは出ますよ。

 トイレに行って席に戻るとき、主婦バイトの鈴木さん(小学生と保育園の子持ちのママさん。昼間の勤務でよく話をする)がレジで手招きをした。

「驚いたでしょ?」

 というので、今まさに店の敷地内を出ていこうとしている宗教家のほうを振り返った。

 レジの前は駐車場が見えるようにガラス張りになっているのでよく見えるのだ。

 あたしはうなずくと、

「あの三人よくここでするのよ。保育園のママさんたちが主にターゲットでね、春のこの時期は右も左も解らない人がいるから、それを狙って声をかけて、」

「怖い」

「そうよ。新ママさんは、声をかけてくれたって喜んできてみたら、知らない人が居て、宗教の話するのよ。さっきの人はものすごく速かったけど、以前、来た人は一時間説得させられてたわ」

「どうなったの?」

「すごく大人しい人だったんでね、一時間、こんなところが素晴らしいとか、こういうところがいいんだって言われ続けていたんだけど、もう、怖いし、心折れそうになってたんじゃない? まぁ、何がそうさせたのか解らないけど、全く別の席に座った、全く関係ないおばさんたちが大笑いしながら、その宗教の勧誘が家に来て、長々と説明するけど、じゃぁ、あんたたち今幸せなのかって聞いたら、黙って帰ったのよ。て、大声で言った後、ドリンクバーで席を立って、あの人たち見つけて、あら、あんたたちこの近くなわけ? って大声で、そしたら、そのすきに気の弱そうな人がお金机において、入れません。てもう、泣きそうな声で言って出て行ったのよ」

「ナイス、おばさん」

「そのあとでなんか憤慨して出て行ったんで、もう来ないかと思ったら、今日もでしょ? どこの保育園に通わせているか知ってるから、苦情入れようかしら、店でそんなことされちゃ困るって」

「できるならしたほうがいいかもね」

「だって、宗教勧誘の話し隣でされてて、ご飯、おいしいわけないじゃない、ねぇ?」

「ねぇ?」

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る