第11話 建て替えの理由
話が前後したけど、不意に思い出したんで。
両隣が建て替えを始める。と言い出したのは今年の初めだった。
去年の年の瀬の忙しい時期に、使わない不動産とかありませんか? 的に回ってきた建築業者。
「痛んでるとことか、ないですか?」
腰、肩、最近は目。と言いたいところを、
「とくには、」
と、うちは断った。
夕方になって、夕刊を取りに外に出た時、先ほどの営業と東山妻が立ち話をしていた。
ふと視線を感じて横を見れば、西川さんが庭先から様子を見ていた。
「あの人って、家の営業だったわよね?」
「でしたね」
「何話してんだろうね?」
「さぁ?」
「あの人、不動産持ってた?」
「さぁ?」
「引っ越すのかしら?」
「さぁ?」
それが、東山家が立てかけを検討していると解った最初だった。
西川さんところは、子供が三人いて手狭だと言っていた。旦那の実家が空き家になっていたのでそこに入ったのだが、昭和の、高度成長期に建てられた家なので子供個人の部屋がなく、建て替えるにはいいタイミングではあったようだ。
「東山さんところが建て替えるのに、なんでうちが建て替えないのよ」
奥さんのヒステリックな声が丸聞こえだった。
面白いのは、奥さんたちは仲悪いのだが、旦那も子供たちも仲がいいのだ。
その子供経由で聞いたのだが、東山さんちは、ひとり身になった旦那の母親、つまり姑を呼び寄せて同居することにしたらしい。嫁姑の仲は良いほうではないが、山に一人暮らしでいるほうが心配だと話し合って決めたらしい。
なので、西川さんが言う、
「このあたり、新しい家が増えたじゃない、だから建て替えようってことなんだわ。見栄っ張りよね、あそこ、子供一人なのに、建て替える必要ないと思わない?」
同居のための建て替えだとは言わなかった。だって、子供たちはそう言ったが、それは奥さんから聞いた話じゃないし、わざわざ西川さんに教えるべき情報でもないし。
家の解体が始まるとあいさつに業者が来たのは、早く春になってくれ。と思う三月の終わりだった。
業者のあいさつが被るってどうだ? と思ったし、同じ日に開始するってのもどうかと思ったが、
「施主の要望ではしょうがないよね」
とあたしが言うと、業者たちは苦笑いをした。
にしても、一軒を挟んで両脇が同時に工事をするって、そんな風景見たことないよなぁ。
て話を思い出したのは、テレビで嫁姑のドラマを見ているから。
仲悪いよね、嫁姑って、結婚したら、みんなこんな風に喧嘩しなきゃいけないのかなぁ? 仲いいところってのはないのかねぇ?
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