第10話 ガテン系の兄ちゃん
両家の建て替えのための取り壊しが何とか半分は済んだんじゃなかろうか? 開いているところから見る限り、家の構造ってすごい。と感心するが、立ち止まって見学できるはずもなく。
常連さんの中に面白い人がいる。
ファミレスの店長(高校の時の同級生)が言うには、あたしが来るようになる少し前から来るようになったらしい。
三時にやってきて、ナポリタン大盛りセットを頼む。同じくカウンターを使うガテン系の兄ちゃん。
ナポリタンの二倍大盛りというのがあるのだが、一瞬眉を顰めるほどあるそれと、キャベツの千切りのこれまた山盛りのサラダと、ライスの山盛り。炭水化物、炭水化物じゃないか。と思うが、それを美味しそうに頬張り、食後に、チョコレートパフェを頼む兄ちゃん。
そんなに食べて、そのあとの仕事動けるのか? てか、毎日同じもので飽きないのか? と思っていた。
今日、メニューを睨んでいる。
あたしがおやつに頼んだシフォンケーキが運ばれてきた。
「それ、うまいっすか?」
あたしは戸惑いながら隣を見る。
兄ちゃんがシフォンケーキから目を離さない。
「あ、あぁ。おいしいですけど、お兄さんのような人には物足りないかも」
「俺のような人?」
「……シフォンケーキって、中身ほぼないんですよ。つぶせばうっすいさらぐらいしかないから、見た目ほど充実感がないというか、重量がないというかね」
「あぁ、そういう……。いやぁ、俺、ここ来て、同じものばかりで、今日はちょっと変えようかと。お姉さん、結構なんでも頼んでるんで、おすすめとかありますか?」
お姉さん。というところがいいねぇ。
でも、同じカウンター組、お互いの注文を気にしていたんだと、ちょっと笑える。
「ハンバーグとかがいいんじゃないの? お兄さん、ガテン系でしょ?」
「ハンバーグ、足りないんすよね、三個いっちゃいますよ。でも、給料日前で、」
「あ、あぁ」
あたしもメニューを広げる。
「以外に、このカツどんセット、多かったよ」
「かつ丼かぁ。かつ丼て気分じゃないんだよなぁ」
「じゃぁ、カツカレー?」
「ファミレスでわざわざ食べるもんじゃないでしょ」
じゃぁなんだよ。
と思っていたら、兄ちゃんが呼びボタンを押した。
「ご注文お決まりですかぁ?」
「ナポリタン二倍大盛りセットと、食後にチョコレートパフェで」
結局一緒かいっ。
と言ったの、聞こえたのか、兄ちゃん、バイトの姉ちゃんが立ち去ってから首をすくめ、
「結局、一緒っす」
と笑った。
に焼けした顔にカラスの足跡がつく。
まくっている袖からは何ともたくましい腕が見える。
あれを支えているのが、ナポリタン大盛りだと思うと、血管が麺に見えてくる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます