第9話 学生(2)

 お通夜か? あたしの目は彼らが入ってくるなりその行動を目で追ってしまっていた。

 大きなボックス席の代わりに、以前喫煙室だったガラス張りのスペースは、四人掛けだったり、二人掛けの席がある。

 彼らはその四人掛けに向かい合って座った。

 以前大勢でやってきていた、高校一年生の彼らだ。

 高校生になったんで、子供たちだけでファミレスデビューしたっていう初々しさがまぶしかった子たちだ。

 だが今日は、男女で顔が少し寂しそうだ。

 あたしは今日は珍しく、この元喫煙席だった、二人掛けの席にいる。というのも、いつも使っているカウンター席に、今日はすでに五人が座っていたのだ。

 営業時間が六時からで、あたしが来るのが八時少し前なので、その間にはもういたことになる。大学生とか、サラリーマンとかもいる。

 席がないので、元喫煙席の二人掛けに座っていたのだ。

 それで、高1の二人だが、この神妙さはいったい何があったのだろうか?

「なんかさ、みんな面倒なんだって」

「みたいだね」

「なんでだよ、この前、中学に戻りたいとか、中学の時がよかったとか言ってたのに」

「ナツキとか、彼氏ができたって言ってた」

「ショウタも彼女ができたって、ナオキは勉強で手がいっぱいだと」

「みんなにさ、もう、そろそろ止めたらって言われた」

「オレも、」

「中学卒業したんだよ? だって、解ってるよ。でも、みんな仲良かったから、会いたいって思っただけなのに、なんか、未練がましいとか、もう、前向きなとかいうの」

 ほほほほ(苦笑)。置いて行かれた。と感じている者同士が居るってわけね? でも仕方ないさ、思春期なんて、五分? いや、一分単位で大人と子供を繰り返す厄介な時期なんだから、本人たちが一番迷っている時に、周りは大人になれとか言って煽るからパニックになるんだよなぁ。この時期って。

「あたし、なんか、置いて行かれた気がして、寂しい」

「でもさぁ、ほら、オレもいるし」

 彼女が上目遣いで彼を見る。

 うん。彼女に賛成。お前じゃないんだよ、お前じゃ。お前はいいやつだけど、お前じゃないんだよなぁ。

「もう、みんな集まらないのかなぁ?」

「集まらないんじゃないの? 一番集まろうぜって、一か月に一回集まろうぜとか言っていた田中が面倒だって言ってんだから、もうないんじゃないの?」

「じゃぁ、これで終わりだね」

 おお彼女よ、多分、こいつは二人だけでも会いたいと思ってるぞ。そこで切っちゃうのって、どうだろうかねぇ?

「あたしも、本当はもうやめたほうがいいと思ってたんだよね、高校の友達との約束断ってくるの、いやになってたんだぁ」

「そう、かぁ。だよな。オレも」

 嘘だな。

「じゃぁ、あれじゃん、今から電話して、合流すれば?」

「あ、そうだね。ありがと、」

「あぁ、いいよ、オレのおごり。最後だから」

「えぇ。悪いぃ。でもありがと、じゃぁまたね。……あ、あたし、そう。用事? あぁ、今終わったとこ、今から行くわぁ」

 現実って、むなしいなぁ。

 女は非常でたくましい。

 男はコーラー味の未練をストローですする。

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