第8話 そんなに興味ありますか?

 ファミレスに避難してきて、常連客の顔を何とか覚えた。モーニングに毎日来る人たち、昼の混雑を避けて一時半から二時の間に来るこの近所で働く人。

 ファミレスは、誰でも利用しているが、わりと常連が居るようだ。

 そして、その常連たちは、同じ席に決まって座る。

 たまに、その席が使われていると少し不機嫌になる。

 今日は、そうして席を取られた常連のおじさんが、カウンターの端に新聞を叩きつけて座った。

 おじさんは六人掛けの椅子に座って新聞を読む常連客だ。忙しい時間をさけ、十時 半過ぎにモーニングにやってくる。もう、料理などほとんどないのだが、小食なおじさんにはそれでいいのかもしれない。いつも、皿は小盛だ。

 おじさんが忌々しく新聞を広げる。

 おじさんのいつもの席は、入り口から二つ目の場所。今日はそこにあたしの知っている人が座っていた。

 六人掛けに六人のおばさん。間違っていないので、気にしたくなかったのだが、バイキングのモーニングなど初めての人が多かったのか、これどうするの? これは何? という声に顔を上げたところに、うちの町内会を仕切っている世話役であり、うちの目の前にある三階建てのアパートの大家でもある、大家さん(大家なので、安易に大家にしてみた。もちろん仮名)が居た。

「あら? 何やって、あぁ、工事してるから? 大変ねぇ」

 苦笑いを浮かべる。

 あたしはこの大家さんが苦手だ。別に、世間話を広める拡声器だとか、人のことを探るということはしないが、どうも、在宅職業を嫌っているのか、理解してくれないのか、とにかく、あまりあたしにいい顔をしない。町内会の行事に参加しないことも、嫌われている理由かもしれないのだが。

 大家さんは、何とかさらに料理をのせると、再びあたしのところへ来て、

「あんた、もう食べたの?」

 と片付いた皿を見る。

「えぇ。まぁ」

「いつからいるの?」

 苦笑いを浮かべる。

「いいわねぇ。気楽で、そうそう、今度の町内の清掃日忘れないようにね」

 苦笑いが顔に張り付く。

 ふと横を見ると、常連のおじさんが見ていた。首をすくめると、

「あんたも大変だねぇ」

 と言ってくれた。

 あたしが大家さんを嫌い、というか苦手な理由は、そのところ隅々まで響く大声だ。多分、町内の清掃活動はみんなに知れ渡っただろう。

「ところで、今度の防災訓練だけど、消防署のほうにも連絡して消火訓練も入れることにしたのよ、いやぁねぇ。あたし一人が頑張ったわけじゃないけど、ほらぁ、温度が足腰の弱い爺さんじゃない、あたしが行くしかなくてね、そんな、そんな、あたしはただの町内会副会長よ」

 あぁ、大家さんの声しか聞こえない。てか、席はずっと外れていて、本来会話なんか聞こえてくる場所じゃないんだけどね。よほど、腹筋が強いんだろうねぇ。

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