第5話 選択肢、たくさんあっても困るよね

 保育園へ迎えに行く前に集まったらしい、こちらは長年ママ友のようだ。仲が良く、手際がいい。

 先ほどのママさんたちはどっと入ってきて席に着き、バタバタとドリンクバーを利用していた。

 だけど、一人がすでにドリンクバーの人数をレジでいうと、常連なのか従業員もそこで注文を取る。一人が席へ行き、二人がジュースを入れる。すでに何を飲むか決めているらしくサッサと手にして席へ行く。

 ただ、一人はどうしていいのか解らず、ドリンクバーにいたママさんたちが、いつもこうなのよ、あたしたち。と言いながら、ドリンクを選ばせていた。

 どうも、新入ママさんのようだ。あとの三人は面倒見のいい、比較的とっつきやすいグループのママさんなのだろう。

 おとなしそうな新入ママは少し戸惑いながらも合流した。

「そしたら、とりあえず、ショウちゃんママさん初めましてで」

 と一人が言うと、なんでか乾杯でなく、初めましてで笑いながらドリンクを飲んだ。

「何か困ってない?」

 切り出したのは、乾杯?の音頭を取ったママさんだ。

「今のところは、」

「そう、でも、明日からご飯弁当いるけど、大丈夫?」

「あ、あぁ、昨日聞いて、食べきれる量をって、ふりかけは入れるなとか、味付けご飯も入れるなって、」

「あぁいいそう、あの先生。でも大丈夫よ。そんなの、だって、前の日に残ったご飯入れるときふりかけかけてたし。子供の弁当のために朝炊くのって、もったいないよね」

「わかるぅ、そりゃ、旦那が弁当持っていくんならついでで炊くけど、子供のご飯て、ちょっとだもんね」

「うちは旦那も、あたしもいるから別だけどね」

 ということは、三人の古参ママさんのうち二人の旦那は弁当なしか。一人は弁当を朝二つとご飯を用意してるんだ。何時に起きてんだろう。

「でも、前の晩のご飯て、硬いじゃないですか、」

「硬いよ。だから、ふりかけはだめでも、混ぜご飯にするのよ。ふりかけ混ぜて、」

「でも、味が、」

「そんなの無理無理、炊き込みご飯持たせたほうが給食食べたって日もあるし、いくらご飯が上等なものでも、子供ってなんか食べないときとかあるし、だから別に気にしなくていいのよ」

 いやぁ、新入ママさん気にしてなかった気がするよ。言われなきゃ、毎日ご飯炊いて、それ持たせてたと思うが、前日のでも、炊き込みでもいいなんて選択し与えたら、かえってどうしたらいいかわからなくなる気がするけど?

「それより、問題は、プールよね」

「そうだね」

 プール? まだ、五月ですけど? 

「プールが六月の中頃から始まるけど、うちらが学生の頃って、週に二日あれはよかったじゃない? まぁ、学校だからね。保育園て、毎日入るのよ。下手したら、午前、午後入るの。そのため、下着がいくつもいるし、タオルは干して二度使いしてるようだけど、毎日水着洗うのよね」

「面倒だわ」

「柔軟剤は入れないで、ほかの洗濯物とは分けて洗っておいてくださいとかね、タオルも前日洗って干して、生乾きのままだったり、あぁ、梅雨同様憂鬱がやってくるわ」

「でも、子供は好きだよね、プール」

「水遊び好きだねぇ」

「だねぇ。去年、さっちゃん、服のまま飛び込んだって、」

「そうよ、あの子、ほかのクラスが遊んでるの見て、遊びたいって、いきなり言って入ったって、先生止める暇なかったとかって、今年はしないように言い聞かせるけど、どうかな、やりそうだよ」

 聞こえてくるのは三人の古参ママだけ、もう一人の声は聞こえないまま、

「あ、もう時間だわ。ねぇショウちゃんママ、もし何かあったら遠慮なくいってね、うちらで分かることならなんでも助けるから」

 と立ち上がった。

 子持ちの四人はそろって出て行った。

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