第1章

 彼は十二歳。趣味は絵を描くことで、嫌いな食べ物はピーマン。というよりか野菜自体食べることを嫌っている。かといって肉や魚も苦手で食が細かった。毎日朝食は摂らず、昼食は給食の牛乳だけで他の食品は全て残していた。

 そして夜はフルーツを食べて過ごした。彼は林檎が好きだった。林檎はとても甘く、彼の渇いた咽喉を潤した。食べ終わると、彼は学校の宿題をし、それも終われば寝室へ向かった。


 またあの夢だ。もう何度目かは分からないので、彼は洋画を見るようにその誰かの話を聞き流した。

 彼は、最近よくこの夢を見るようになったと感じた。それもそのはず、実は三日連続だったりするのだ。



 信じられない。こんなことがあるのだろうか。今日もあの夢を見ているので、これで六日目。彼はとうとうその声の主と話し合うことに決めた。



七日目。

 「******、起きなさい」


 …あの声だ。今までは答えていなかったけれど、今回は答えるぞ。


 「あのさ、いつもいつもなんで僕の名前を呼ぶの?」

 「貴方の……が必要だからです」

 「え?今、何て言った?」

 「貴方の協力が必要だからです」

 僕が協力すること?何だろう、バイトとかかなー。それとも…危険なこと?

 「そうです。今貴方が考えているであろうことです」

 「あっ、僕呟いてたかな?」

 「いえ…。顔に書いてありましたので…」

 「そっか。ごめんって、そんな訳ないだろー!危険なことって何だよ、僕は絶対にやりたくない!」

 急に優しくなったかと思えば、…そういうことかよ。


 「勇者になって魔王を倒してほしいのです」


ん?今とても聞いてはいけない言葉を聞いたような…


 「勇者になって魔王を倒してほしいのです」

 「そんなこと、僕にできるか!大体、勇者と魔王ってなんなんだよ」

 「勇者とは、勇気のある者のこと(ry) 魔王(まおう)とは、悪魔や魔物たちの王  (ry)【ウィ●ペディア参照】」

 「そうじゃなくて、その…」

 「この世界においては、魔王は絶対的な権力を揮う悪しきもの。勇者は魔王を止めるために必要なものです」

 「僕が断ったらどうなる」

 「世界が消滅するでしょう。これは、この世界(夢の世界)だけでなく、貴方の現実世界にも影響する問題です」

 「それなら、僕じゃなくて国連とかに連絡した方が…」

 「生憎、私の力が足りなかったので貴方にしました」

 「無理。僕にはできないから」

 「否、貴方にはできます」

 「なんでだよ」

 「貴方の祖先が勇者だからです」

 「祖先って何?」

 「貴方のご先祖様のことです」

 「僕の先祖ってそんなにすごい人だったの?」

 「ええ、だから貴方にもできると思いますよ」

 「でも、一人じゃ不安だな…」

 「ご安心を。既に仲間が待機していますので。」

 「だからあの時、『仲間が待っていますよ』って言ったんだ。やっと意味が分かったよ」

 「分かっていただけたのなら幸いです。あ、申し遅れましたが私、ティルと申し  ます。では、参りましょうか」

 「わっ、待ってよー!」

 こうして、僕とティルという女性の物語が始まるのであった。



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