② 文章の目的が軽量であり、内容が要約できる簡素さである

 さて、読者が「私も」と手をあげるようなネタ――つまり共通の話題は見つかっただろうか、次はこれを読者が理解しやすい形に書き起こしていこう。

 こと読者から感想をもらうための文章に特化していうならば、読解に芸術的な素養や教養を必要とする小説はお勧めしない。形式はエッセイか作文が最良である。

 逆に文章の目的の明確化という意味では、論文や新聞記事のような文章のほうが適しているのだが、読者の反応を期待するには隙がなさすぎる。また、読者を誘導するための仕掛けも作りにくいため、あくまでもエッセイか作文の域が好ましいのだ。

 この段階での目的は「私も」と会話に参加してきた読者に対して会話の内容を明確にすることである。これによって、単に「私も」だった読者の心は「私もそうだ(肯定)」もしくは「私は違う(否定)」の明確な意思に変化する、つまり読者の発言のスタンスが整う。

 世の中には『否定でも肯定でもない』というスタンスが存在する。多く日常の会話であれば、むしろ大部分がこの『否定でも肯定でもないスタンス』で発せられるものではないだろうか。

 しかし『否定でも肯定でもないスタンス』から発せられるのは単なる相槌であり、言語化して見せるに足りない言葉なのだから、わざわざこれを感想として書面化してまで作者に見せようとは思わないだろう。だからこそ読者に『否定か肯定か』をはっきりと選ばせる必要があるのだ。

 感想とは読者からのレスポンスなのだから、読者は発言するべき言葉を獲得する必要がある。そのために、読者が自分のスタンスを明確に自覚できるように誘導しておこう。ここで必要となるのが文章の軽量な目的と要約できる簡素さなのである。

 軽量な目的とは――誰でもが簡単に返事を返せる質問であること。会話に例えるならば「うちの晩御飯は鮭だったけど、お宅は?」程度明確な返答が用意できるものが好ましい。最低限でも読者が否定か肯定かをはっきりと言葉にできるような方向性で書かれていること。

 小説は明確な否定も肯定も読者に求めない形で書かれていることが多い。娯楽に吹っ切ったものであれば特に、最初から否定も肯定も必要としないではないか。ここに明確な意見を述べよといわれてしまえば、相手が戸惑うのも無理はない。

「うちの晩御飯は鮭だったんだけどさ、鮭が我が家の食卓に上がる確率とそれに対するあなたの見解を要約してまとめよ」よりは「うちの晩御飯は鮭だったんだけど、あなたも鮭好き?」のほうが答えやすい。だからこそ、どうしても感想が必要ならば、このレベルまで『相手が答えやすい形』での話題を投げてやること。もちろん晩御飯の話を書けというのではなく、あくまでも会話の入り口として何を選ぶのかという話だ。

 そして要約――まずは自分が何を読んでいるのかを負荷なく理解できなければ、相手は自分の意見を素直に述べることはできない。これは会話が長引けば長引くほど、また言葉数が増えるほどに思考の数が増えて自分の意識を見つめなおす集中力が失われるからなのだ。

 これを解消するのが要約である。いかに文字数を使おうとも要約されたものが短ければ短いほど、人は自分の思考に集中しやすくなる。つまり自分が選んだスタンスからの意見というものを構築し始める。

 特に感想を書かせることに特化するならば、要約した時の文章の形が『○○という出来事があったんですが、あなたはどう思いますか?』であることが望ましい。そうした見地からも、自分の主観を取り混ぜつつ話を進めることができるエッセイというものは、最も感想を書かせるための文章にふさわしいといえよう。

 エッセイや作文であれば長文を読ませるという時間的負荷を相手にかけることもない。だからこそ相手は、自分の思考に没頭する時間を十分にとることができる。つまりレスポンスのための言葉を構築する余裕も発生する。ましてや文章そのものが『あなたはどう思いますか』と問いかけてきたならば、考えずにはいられない。

 ここまでできれば読者は自分の意思とスタンスを持って、あなたが与えた質問に対しての答えを探し始めることだろう。

 次回は、それを文章として自分のコメント欄に書き込んでもらうために必要なもの、『発言しやすい方向性』についてをご紹介しようと思う。

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