スィートホー…スピタル

背景


 音のない白い世界という時期に、暖をとるためにつけた火の色が、目に映し出される時節、いかがお過ごしでしょうか。


 タカシです。







 バイオが崩壊する例の振り向き某シーンにならないよう、気づかれない様に後退しては急ぎ病室に戻ると、そこには先客が一人おられました。


「何じゃ、ようやく戻ってきおったか・・・」


 と、呆れられて此方を見てくる女性が・・・どことなく見覚えのある姿で、あ、ハバリさんですよね?


「何を言うとるか。それよりも、はよういくぞ」


 え?一体どこに?


「この異界化止めるため、その元凶の元にじゃ」



 そう言われては、ハバリさんはドアを開け放っては、どんどん先へと進んでいきます。

 まるで目的地が分かるかの様に。


 道中、ハバリさんから説明をうけると、どうやら現世とは異なる界が、人為的に作られており、なおかつその異界を作る原因に、黄泉にたどり着けなかった魂の残滓が集まり始めては厄介な事になりかけているという。


 そうして、出てくるものが不死者たちばかりになってきているというので、和装姿のハバリさんが実態化した日本刀(?)で、顔のない看護師やよくわからない血濡れのオッサンや、よくわからないうごめく肉体や、赤子の顔をした何かなどをバッサバッサと切り倒しては進むという恰好になっています。



 というかハバリさん?人の形とれたんですか?


「異界だから元の身体と同じ様な構築は容易じゃな」


 じゃぁ現実では?と聞くと、


「やれんことはないじゃろうが、制約がありすぎるからのぅ、ちと厳しい」


 あぁ、やっぱりあの憑依(?)もどきをされた翌日の筋肉痛(筋を痛める事もある)を経験するのは、辞退したかったのですが・・・今後も無理そうな予感がします。




 そうこうしながら、別棟の1階まで進んできました。


 そういえば、出てくる不死者もどきは元は現実の人なのでは?と思っていたのですが、怨念の類だから、切り捨てるしかないとの事だそうです。


 それにしても、飛び散る血しぶきに、切り落とされる肉塊・・・絵面的に言えば、スプラッター映画真っ青です。


 そんな状況にもかかわらず、自分としては平気な感じとなってるのが何ともいえず・・・


 これはあれですか?昨今の業界仕事のせいか、こういったグロなモノを見ても耐えきっている自分がいるというやつでしょうか。


 こう、業界に"染まりだしたのかなぁ・・・"と感じてしまい、世間から離れていっている心境に、寂しさというか、侘しさというか・・・



「ついたぞ」



 一人、金魚の糞のごとく付いて行っては、愚痴のごとく心境をまとめていた際に、先ほどの言葉とともに歩みが止まりました。


 止まった先にはガラス部分で向こう側が見える、両扉で開く扉がある場所。


 この扉はアレだ、ストレッチャーがそのまま走り入る構造になっている扉で、ストレッチャーが当たる所に金属補強がされている扉という奴。



「覚悟はできとるな?いくぞ?」

「はい?」


 と、腕を引っ張られては、こちらの心境や心構えの事はおかまいなく、その扉を開いて中につれ・・・?



 ん?青い壁?天井?床?


 なんとも言えない青い空間とでもいうのでしょうか・・・?あの扉の扉部分から除いていたのは、普通の病室の通路だったと思ったんですが、扉を開けた先は、まったく異なっている通路があらわていました。



 そんな青だらけの通路?空間を、えっちらおっちらと歩き続けた先に、ポツンと白い何かが・・・いる?




「ようやくお出ましじゃな」



 お出ましというのでしょうか。


 よく見ると、ただ単に体育座りしている病院服を着ているブロンド姿の子供の様な存在が、膝を抱えて座り込んでいるだけなんですが・・・


 白い病院服を着てるから、入院患者だったのかな?とは思うんですけれど・・・



「あ奴が今回の元凶じゃな」

「えっ?あんな子が・・・?」

「おぬしも経験しとるだろうに。子供だからと言って甘い考えで近づいて、痛い目にあった事を」



 あー、はい、ありましたね。


 欧州の島国だっけかで、救援要請を受けて出向する事になり、現地でのポスターガイスト現象を起こしてたのが、思春期っぽい子供の暴走で大変な目にあいました。


 まぁ、あの時の経験で、疫病神からもたらされた"衝撃"の新たな使い方がわかりましたが・・・




 いや、今の状況にもどしますが、さて、これからどうしようものか。

 見るからに、生身の身体、つまりは元の世界の住人なのは理解できます。


 ハバリさんも、距離を取っては簡単に切って捨てるという訳にもいかん。と悩んでいます。



 それよりも、重大な事に気づきました。


 ヤバイです。自分たちだけでは解決できそうにないです。


 相手もこちらに気が付いたのか、顔を上げて何かを訴えようとして来ましたが、自分としては嫌な予感しかしません・・・・











「Не приходи!」


やっぱり日本語じゃなかったぁぁぁぁ!








追伸

 こんな時は落ち着きましょう。

 通訳がいなくても何とかなります。

 そう、この果物マークのスマホならね。


 最近の翻訳アプリは、すごい代物になっています。

 海外出張先の会話も、音声翻訳もしてくれます。

 これが文明の利器というものですか・・・





('A`;):ただ、バッテリーがね?結構ヤバイ・・・

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る