兄の物語[84]分かち合う
「………………………………ようやく、か」
アインツワイバーンの脳天に閃光をぶちかましたクライレットは瞬時に後方へ下がった。
脳がある生物にとって、当然なら脳は超重要な器官であり、今回の様に完全に貫かれれば、速攻で息絶えてしまう。
「やっぱり、最後狙ってたわよね」
「そうだね」
だが、偶にその常識をぶち壊す現象が起こる。
アインツワイバーンは……クライレットに脳天を貫かれても、少しの間意識があった。
自分を殺した人間でなくとも良かった。
迂闊に近づいてきた人間がいれば……最後の力を振り絞り、その首を噛み千切るつもりだった。
「はっはっは! 最後の最後まで油断出来なかったな」
「近づいてたら、がっつり噛みつかれてたかな?」
「一時的に限界を超えたかもしれない。その可能性を考えれば、フローラでも噛み千切られていたかもしれないね」
大袈裟、とは誰も思たわなかった。
過去に急所を破壊したのだから、もう大丈夫だろうと不用意に近づいたバルガスが強烈な一撃を食らい、両腕の骨を
バキバキに砕かれたことがあった。
百聞は一見に如かず。
四人は既に身を持って最後まで闘志を切らさなかった者の強さを知っている。
「まっ、何はともあれ……やったな!!!!!」
大声を出して魔物が近寄ってこようと、知ったことではないと言わんばかりの声量でアインツワイバーンの討伐を喜ぶバルガス。
「そうね……やったわね」
普段ならここでバルガスに苦言を飛ばすペトラだが、特に注意することなく、共に喜びを分かち合った。
「ようやく受けられるね~~~」
「あぁ、そうだね。ようやく……ようやくだ」
クライレットは弟のゼルートと違い、それなりに冒険者のランクに拘っている。
両親の実力を知っているからこそ、二人がAランクに達した記録を絶対に越える!!! なんて軽々しくは口に出来ない。
それでも、なるべく早く……冒険者としての活動が許される間に、Aランクに到達したい。
(Bランク試験は、一発でクリア出来るだろう)
自分たちであれば、絶対にBランクの昇格試験をクリア出来るという自信があるクライレット。
傲慢と捉えられるかもしれないが、これまで何度もBランクモンスターを討伐してきた経験から来る自信であり、決して過大評価ではなかった。
「俺たちもようやくBランクだな!!!」
「バルガス、今回の戦いは昇格試験じゃないのよ」
「いやぁ~~、それは解ってるけどよぉ。ぶっちゃけ、Bランクの昇格試験で、このアインツワイバーンよりも強いモンスターと戦うことになるのか?」
「…………そうね。可能性は低いでしょうね」
いつ、何処でどういったイレギュラーが起こるか解らない。
そう言いたい気持ちもあるが、そもそも冒険者ギルドがイレギュラーが起きそうな内容を昇格試験にするとは思えなかった。
「とりあえず、アインツワイバーンを解体しちゃおうか」
「そうだね」
バルガスとペトラが見張りを行い、フローラとクライレットでアインツワイバーンの解体を行う。
「そういえばよ、クライレット」
「なんだい」
「お前一人でアインツワイバーンと戦ってれば、勝てたか?」
「……勝てたんじゃないかな。状況によっては鳳竜を抜いていたかもしれないけど」
今回の戦い、結果として四人とも大した怪我を負うことなく討伐に成功したが、それは四人のコンビネーションがあっての結果。
「はは!! やっぱりお前が万が一を心配するレベルだったか。あぁ~~~、次はサシで戦ってみてぇもんだな」
「死ぬ気?」
「死ぬ気で戦って勝つつもりに決まってんだろ」
自信満々で……どこか憎たらしさを感じさせる笑みを浮かべるバルガスに対し、ペトラはため息を吐くだけで、それ以上ツッコむことはなかった。
何故なら、強敵を相手にして死ぬ気で戦うことこそ、重要な心構えだからである。
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