少年期[995]偽りのない、言葉

「私は、皆の元にはいけない」


帰れない、ではなくいけないと口にした。


それは……自身がゼルートという存在に囚われている訳ではないという事実。


長年共にパーティーとして、友人として活動してきたフィンザスたちだからこそ、その言葉に込められた意味が理解出来る。


「ッ…………本当に、本当に……僕たちの元には、来れないのか」


「うん、ごめん。皆がここまで来てくれたことは、本当に嬉しい。皆と……また一緒に冒険したいって気持ちは確かにある。けど……それ以上に、ゼルートと……ルウナたちと一緒にいたい気持ちがあるの」


下手に誤魔化すことなく、ありのままの想いを伝えた。


その想いを伝えられたフィンザスたちの心の内は……大きな悲しみと小さな怒りがあった。

自分たちと過ごしてきた何年もの月日は、その少年とのたった一年弱に負けるのかと……今まで自分たちがアレナを救うために重ねてきた努力はなんなんだったんだと……ほんの少し、叫びたい気持ちがある。


ただ……五人は、自国に戻ってきた時にゼルートがどういった状況かでアレナを助けたのか知っている。

もし、その場にゼルートがいなければ、自分たちがアレナを助けられたとしても……心に癒えない傷を負っていたかもしれない。


「ッ!! っ…………そう、か。うん、そうだな…………本当は、こうしてアレナが幸せに生きているだけでも、喜ぶべきだったんだ」


フィンザスは今ここで、自分が長年抱えてきた想いを伝えようと思った。

今ここで言わなければ……もうチャンスはない。

縁が切れてしまえば、伝える機会すらなくなってしまう……それでも、今そんな想いを伝えてしまえばどうなるか想像出来ない程、フィンザスの頭はぐちゃぐちゃになっていなかった。


今、そんな想いを言葉にすれば、余計にアレナを辛い思いをさせてしまうかもしれない。

何より……男として、そんな卑怯なことはしたくなかった。


「ゼルートさん……これからも、アレナのことをよろしくお願いします」


相変わらず涙は止まらない。それどころか鼻水まで止まらない。

せっかくのイケメンフェイスが超台無しである。


だが、ゼルートはその顔は変だのダサいだの思うことはなく……ただ、素直にカッコイイと思えた。


「えぇ、勿論です」


その後、屋敷から出た蒼天の翼たちは街に留まることなく、直ぐに別の街へと向かった。



「その、なんか……ごめんね」


「別にお前の元仲間が連絡も無しに特別訪れてきたことは、全く迷惑とか思ってないよ。寧ろ……どこかで、区切りを付けなきゃいけない問題だと思ってた」


リーダーであり、仲間であり……自分を救ってくれた恩人がそう言ってくれるのは嬉しい。


それでも、もし訳なさが消えることはない。


「それでも、申し訳ないと思ってしまうわ」


「そうか…………んじゃ、もうその申し訳ないって気持ちは受け取った。だから、これ以上ごちゃごちゃと考える必要はない。解ったな」


「……ぷっ、ふふふ。もう、本当に豪快ね…………ねぇ、ゼルート。あなたは、その……フィンザスたちが私をわ、渡してほしい? って言ってきて、どう思ったの」


そういう意図を持って聞いたわけではない。

ただ……おそらく、その実力で殆どの者を手に入れられるであろうゼルートが、今回の一件に対してどんな感情を持ったのか知りたかった。


「どう、思ったか……………………あれだ。お前を、フィンザスさんたちに触れさせなかったのは、俺の我儘だ」


「そうなのね……ん? 我儘???」


「そうだよ、俺の我儘だ…………俺はお前が俺に対して変に恩に縛られることなく、アレナ自身の意思を尊重してほしいと思っていた。けど、少しだけ……お前の気持ちが元仲間の元へ帰りたい方に揺らがない様に、触れさせなかったんだよ」


言い終わってから、なんで当時の心境を全て話してしまったのだと、後悔と恥ずかしさで顔が赤くなるゼルート。


「……ふふ、そうだったのね……ありがとう、ゼルート」


そんな歳相応の恥ずかしさを浮かべるリーダーの頭をそっと撫でた。

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