少年期[982]デモンストレーション

「「「「「よろしくお願いします!!!!」」」」」


「はい、どうも。こちらこそよろしく」


実家に休息するために戻って来たゼルートだが……今、目の前には多くの若い冒険者たちがいる。


ゼルートが実家を出て冒険者になる前から冒険者ギルドが発足されており、今ではベテランの冒険者などが他の街から拠点を移したりなど、それなりに人材が集まってきている。


そんな冒険者ギルドの方から、是非ともゼルートたちにルーキーたちへ指導を行って欲しいと頼まれた。

この頼みにゼルートはルーキーたちの指導ぐらいならと思い、快く引き受けた。


当然ながら、ルーキーたちには冒険者ギルドでそれなりのポストに就いている職員から、絶対に無礼な態度は取るなと伝えられている。


「それじゃ、まずお前たちに色々教える前に、本当に俺が噂通りの強さを持ってるのか、デモンストレーションを行おうと思う」


事前にギルド職員の方から、ゼルートがどういった人物なのか……男爵家改め、伯爵家の令息である二つ名持ちの英雄だと教えてあります、と伝えられている。


しかし、もし彼らの立場であれば……と考えられるゼルートはそれはそれ、これはこれと一旦置いておき、初っ端からゲイルとの強化系スキルを使わない……だが、身体能力をフルに活かした模擬戦三分間行った。


「な、なんだ、これ」


「す、すげぇ……ほ、殆ど、見えねぇ」


まだまだ経験値が少ないルーキーたちには、殆ど動く線しか見えない。

姿はハッキリと見えないが、体と体がぶつかる衝撃音と、空気の揺れだけはハッキリと感じ取れた。


「といった感じで、こんな見た目だけど噂通り強いから安心してくれ」


「「「「「は、はい!!!」」」」


「よし、まずは皆が何を出来るか教えてもらおうかな」


先程の戦いを観て、敬意を持つなというのが無理な話。


ルーキーたちの心に嫉妬という感情は一切無く、ゼルートたちに自身が何を出来るかを伝え始めた。


「噂を耳にしてたら解ると思うが、俺は魔法も使える……というか、才能という点に関しては武器の扱いや体術よりも魔法の方が優れてる。だから、魔法がメインの奴らは俺が教える」


紅いリザードマンとバチバチに体術で戦っていたゼルートの姿からはとても想像出来ず、ルーキーたちは驚きを隠せない。


「安心しろ! 体術は私がみっちりと教えてやる!!!!」


「剣や槍の方は私が教えるから安心して頂戴」


ゲイルはアレナの、ラルはルウナのアシスタントを務める。


「よ~~~し!! 僕が皆に色々と教えるね!!!」


「「「「……」」」」


人間体となったラームを前に、斧や鞭などを扱うルーキーたちはどう反応すれば良いのか固まっていた。


「それじゃ、良く見ててね!!」


そう言いながらアイテムバッグの中からダンジョン産の斧を取り出し、身体能力をルーキーたちがしっかりと見えるように調整。


「よっ! ふんっ!! はっ!! せいっ!!!」


「「「「っ!!??」」」」


よっぽどのバカ、間抜けでもなければ目の前の光景が事実であると認識できる。


高品質であろうマジックアイテムの武器を使ってるから、上手く扱ってる様に見える?

中にはそういった効果を持つマジックアイテムもあるが、斧を使っている者であれば解る……確かな技術力がなければ、ここまで理想的に振るうことは出来ないと。


「それじゃ、次は鞭だね」


鞭もダンジョン産の物を使うものの、明らかに動きが素人のそれではない。


一通りのデモンストレーションが終わった後、ルーキーたちは自然と拍手を送っていた。

何故……元スライム? がここまで多くの技術を習得してるのか解らない。

ただ、兎にも角にも凄い……凄過ぎるということだけは理解出来た。


「それじゃ、しっかり教えていくね!!」


敵対者から奪ってきた才能の中身を深く読み取り、ショタ教師の講座が始まった。

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