少年期[963]これからも二度とない一撃を
(先程までの動きは何だったのかと苦言したくなる腕だな!!)
その場から一歩も動かず、一切詠唱することなく攻撃魔法を次々に展開し、迫りくる攻撃魔法を撃墜。
そして時折カウンターを混ぜてくる。
「やれば出来るじゃないか」
「ッ!!!!」
先程の最悪を防ぐための煽りが抜けておらず、正直な感想が零れる。
ゼルート基準として、インテリ次男は魔法使いとしての理想を殆ど再現していた。
敵の周りを動きながら攻撃魔法を放つことが出来る。
放つ攻撃は敵を倒す為だけの攻撃だけではなく、足場などを狙って体勢を崩そうとする。
止めの一撃必殺を放って倒すことなどを考えれば、まさに理想の動き。
それを身体強化を発動して走り続けながら行える。
ゼルートとしては、それが出来てこそ一部の例外を除いて一流魔法使いの条件だと考えている。
(いったい、今までどれ程の経験を積んできたのだ、この少年は!!!!)
自身の命を顧みず、子供の頃からアホなことばかりをしてきた。
仮にインテリ次男の心の内を読めたのであれば、ゼルートはそう答える。
そこは紛れもなくやや放任主義、自由に伸ばす教育を行っていたゲインルート家だからこそ、誕生した怪物と言えた。
仮にガチガチの融通が利かない家に生まれていれば……現時点の領域、レベルに辿り着くまでにはもう少し年数が必要だったかもしれない。
「はぁ、はぁ、はぁ…………」
「どうした、降参か?」
ここでインテリ次男が降参と宣言しても、一切笑うつもりはない。
覇王戦鬼という怪物に対し、本当に勝利をもぎ取るつもりで……殺してでも奪うつもりで仕掛け続けた。
だが……あまりにも隙がなさ過ぎた。
「……恥を忍んで、頼みがあります」
「…………」
「私の最強の攻撃を受けて頂きたい」
頼みを聞き終えた瞬間、インテリ次男との戦闘で……初めて心の底から笑みを浮かべた。
「良いぞ。戦ろう、撃ち合おう。全力で……殺す気で来てくれ」
「えぇ、勿論です」
普通であれば、このアホはなんてバカな言葉を口にしているのだと、イカれ過ぎてまともな思考が出来なくなったのかとツッコむ。
インテリ次男以外の見物人たちは心の中で煮た様なことを呟くが、覚悟を決めたインテリ次男にはもう……そのような事を考えている余裕はなかった。
ただただ目の前の怪物を、弟の仇を潰す為に魔力を総動員。
(これまで以上ではない!!!! これからも、二度と出せない程の一撃をっ!!!!!!!)
(おいおい、さっきまでの臆病っぷりは何だったんだよ!!! 最高じゃないかっ!!!!!!!)
眼、鼻からも血が零れるほど、全魔力を総動員して集中力を高めた結果……インテリ次男は現氷魔法のスキルレベルでは放つことが出来ない、ワンランク上の攻撃魔法を放つことに成功。
「フローズパイルスマッシャーァアアアアアアアッ!!!!!」
「煉獄の凶弾」
全てを凍てつかせ、標的を粉砕する破壊槍。
それを迎撃するために放たれた攻撃は……先日の戦争で使用されった敵を焼き食い尽くす、マグマの顎。
二人がこれから放つ攻撃の危険度を察知した魔法使いたちが即座に結界を張ったため、攻撃が公爵などに当たることはなかった。
「はぁ、はぁ、はぁ……やはり無理、でしたか」
「そうだな。でも、こっちの攻撃があんたの攻撃を食い尽くすことはなかった。完全な相打ちだったな」
「…………それはそれで、誇れてしまい、ますね。悔しい、ですが……」
全魔力を消費した上に、文字通り己の限界を越えた攻撃魔法を放ったことにより、インテリ次男はその場に倒れた。
(流石あの剣豪の兄貴ってところか……ふふ、ここに来た理由が理由だからあんまり喜ぶのはちょっとあれだけど、ちょっとはわざわざディスタール王国に来た甲斐があったと思えるな)
ゼルートは今回の一件に多少なりとも満足感を感じ始めたが……ディスパディア公爵家の面々としては、まだ一ミリも負の感情が解消されていなかった。
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