少年期[961]根性は良き

二人目の挑戦者は、ディスパディア公爵家の四男。


ローレンスや五男と違い、得物はロングソードではなく槍。

見た目も礼儀正しい雰囲気ではなく、少々やんちゃな風な顔。


(全員同じ家に生まれたからといって、似た様な見た目になるとは限らないってことだな)


何か納得したように頷くゼルートだが、そもそもゼルートと兄であるクライレットも、見た目や雰囲気だけであればそこそこ似てない。


「ぶっ潰してやるよ」


「ご自由にどうぞ」


最初に喧嘩を吹っ掛けてきたのは四男であるため、ゼルートも遠慮なく煽る。


(煽られたからって、即座に攻撃を始めるか……槍術の腕は別に雑ではないし、特に怒りで動きが乱れてる様子もない……でも、ちょっと動きがストレート過ぎるかな)


槍使いの四男は、兄弟たちの中では身体能力に優れた部類ではあるが、それを武器にゴリ押しして勝てるほど、ゼルートは甘い相手ではない。


見た目で判断してはいけないという典型的な例であるため、大男より腕力は非常に強い。


(んの野郎!!! 掠りもしねぇとか……どういう事だっ!!!!!)


ぶっ潰してやるよなどと、最初から荒い言葉で喧嘩を売りはしたものの、弟である五男との戦いから、まだまだ余力を残しているという事実は把握していた。


だからこそ、五男と同じく最初から強化系スキルを発動。

卑怯だのなんだのと言われても構わないというスタイルであり、バフ効果のあるマジックアイテムを発動していた。


(クソがッ!! 嘗め腐ってんじゃねぇぞっ!!!!!)


ロングソードを使わないというだけではなく、スキルも魔力も使っていない。

良く視ればそれぐらいは解るため、四男の怒りは更に爆発。


確かに試合、決闘などにおいてスキルや魔力を使用しないという行為は、嘗めていると思われても仕方ない。

それはゼルートも解っている。

解った上で……ゼルートは四男も自分が本気を出すほどの相手ではないと判断し、適当に戦っている。


主な理由は、一瞬で終わらせては彼らの自分に対して溜まった鬱憤を発散させられないから。

一瞬で倒してしまえば「今のは油断してただけだ! もう一回戦らせろ!!!」という流れが容易に想像できる。

加えて、仮に魔力を纏い……強化系スキルしようものなら、手加減していたとしても殺してしまう可能性が……僅かに上がってしまう。


彼等は立場上、この戦いで重傷を負う。もしくは殺されてしまっても文句は言えない。


ゼルートに黒葬を差し向けたのは一部の人間であり、彼らは関係無い?

確かに彼らは関係無いと言えば関係無い……しかし、ディスパディア公爵家の人間という事実は変わらないため、ゼルートが態度を改めることはなく、適当にガス抜きさせるつもりで戦闘を続ける、


(全体的に悪くはないけど、槍使いという括りなら……銀獅子の皇のアルゼルガさんの方が何枚も上手だ)


五男の少年と同じく、弱いとは思わない。

ただ、やはりそれなりに強いという以外の感想は出てこず、風を纏った渾身の突きをあっさりと回避し、リプレイの

様にボディーブローが突き刺さり、骨を越えて内臓を大きく損傷。


(ッッッッッ!!! ざ、けんな……動け、動け動け動け動け、動けよこのポンコツが!!!!!!!)


まだ膝は付いていない。

膝を付かず、立って動くことが出来ればまだ戦闘は続行できると、先程の戦闘から学んだ。


「闘争心は立派ですね。でも、俺の勝ちです。そうですよね?」


「……そうだね。ゼルート君の勝ちだ」


激しく根性を燃やすも虚しく、四男はその場に崩れ落ち、地面に膝を付いてリタイア。


次の相手は次男である魔法使いスタイルの青年。

当然ながら、この青年もゼルートに対して並ならぬ憎しみを抱いていた。


だが……彼も兄弟たちと同じく並み以上の強者。

数ある技術の中で魔力感知に優れチエル、


しかし、今回はその感知力が不利に働いた。

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