少年期[956]俺は信用してない

「あの門兵の人、全く安心出来てなかったわね」


「はっはっは! 確かにそうだったな。まっ、それだけ自国の貴族を信用してないってことだろ」


「それは……ちょっと違うんじゃないかしら」


問題が絶対に起きないと信用出来ない。

その一件に関しては、全てディスパディア家が悪い、というのは違う。

それがアレナの考えだった。


「結果として……まぁ、私たちががっつり敵兵、騎士、冒険者を倒したわけだけど、それでも戦争に負けた。その事実があるからこそ、絶対に問題が起きないとは思えないんじゃないかしら」


「さてさて、それはどうだろうな。確かに面子を重視する貴族であれば、寧ろ問題が起きない方がおかしいかもしれないが……言っとくけど、俺も一応貴族なんだからな。それ、忘れてないよな?」


「えぇ、勿論忘れてないわよ。貴族の令息ではなく、貴族。領地こそ持ってないけど、正真正銘貴族なのはちゃんと覚えてるわよ」


「そりゃ良かった。自分で言うのもあれだが、立場的にはそれなりに凄い筈なんだよ。そんな人間相手に……自分たちの家の人間が殺されたからって、黒葬を……Aランク冒険者であれば余裕で……ってのはちょっと言い過ぎか。でも、一定の状況下であれば殆どの連中は殺せるぐらいの実力は持っている。そんな恐ろしい奴を仕向けてきたんだぞ」


ゼルートの言葉通り、黒葬が全力を出せばAランク冒険者……一人であれば、抹殺するこはそこまで難しくない。


開けた場所であってもその戦闘力はすさまじく、ゼルートも黒葬との戦闘は久方ぶりの枷を外した。


「俺はディスパディア家に対して一切信用がない状態だ。それだけは変わらないぞ」


「……そうね。ちょっと話がズレた気がするけど、そもそもディスパディア家が信用出来ないという話には同意するわ」


「そうだろそうだろ。まだ先に黒葬を送るより前に、こうやって事実を信用出来ないから試させてくれって伝えて来たら、ここまで信用がガタ落ちすることはなかったよ」


黒葬の一件は国王も知っている為、もしかしたら王家ぐるみの一件だったのではないか?

そういった不信感が生まれたこともあり、オルディア王家としてディスパディア家を要注意の貴族と認定している。


「世の中、もった簡単だったら良いのにな」


「ルウナの言うことは解らなくもないけど、向こうが先に手を出してきたから殺しても問題無いって世の中だと、法の意味がなくなるし……どこの街も治安が悪い状態になる」


「ゼルート……本当にその通りなんだけど、万が一が起こった場合、あなたがそれを行おうとしてると解ってるのよね?」


「解ってる。ちゃんと解ってるっての。でも、今回のことは……ほら、あれだ。特例ってやつだ。だって、他国の公爵家が一介の……元冒険者、男爵家の令息を狙ってきたんだぞ。いくらなんでも無茶苦茶だろ」


「うぐ…………そう言われると、反論出来ないわね」


一介の冒険者であっても、男爵家の令息……ましてや男爵の爵位を持つ人物であったとしても、公爵家が財力を利用して殺そうとするなど……それはもはや復讐ではなく虐めに近い。


相手がゼルートという正真正銘の化け物であるからこそ、復讐として成り立っている。


「二度とそう言うことが起きない様に、釘を刺しておかないと駄目だろ」


「そうね……でも、やっぱりディスパディア家の人たちだけに留めた方が良いと思うのだけど」


「それに関しては、国王陛下の前ではあんなこと言ったが、正直ちょっと悩んではいる」


相手が覇王戦鬼とはいえ、王族が何人も殺されては、それなりに自分を仕留めようとする蛮勇を抱く者たちが現れるかもしれない。


ゼルートとて、やはり無駄に命は奪いたくない。


であれば、もしディスパディア家の者たちが越えてはいけない一線を越えてしまった場合、どうするのが一番良いのか……ディスパディア公爵家が治める街に到着する前に、ゼルートはナイスアイデアを思い付いた。

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