少年期[955]次いで可能性が高い

国境を越えてもゼルートたちはラルに乗って悠々自適に空の旅を楽しんでいた。


「話を通してるとはいえ、こんなにあっさりと出られるとはね……ちょっと悪いことしてる気分」


「ん~~……確かに、その気持ち解らなくはないな」


ルウナにはさっぱりだったが、特に興味はないため会話に参加しなかった。


「っ、ゼルート。おそらく数分後には雨が降ってくるぞ」


「げ、マジかよ」


ゼルートの魔力操作技術があれば、降りかかる雨を弾き飛ばしながら進むことが可能。

しかし、面倒な作業であることに変わりはない。


「ラル、雲の上を飛んでくれないか」


「分かりました」


主人に言われた通り、雨雲が完成する前に雲の上へと上昇。

先程までと比べて少々寒くはなるが、それでも雨に濡れる……面倒な作業を行うことに比べれば、無理なく耐えられる。


(……どうせなら、そこら辺の雲を全部吹き飛ばしても良かったか?)


何かを考え込む様な表情を浮かべるリーダーの考えが気になるアレナ。


「ねぇ、ゼルート。また何か悪いこと考えたりしてない?」


「俺を何だと思ってるんだよ」


「……覇王戦鬼?」


「うぐっ……お前らまでその名前で呼ぶなっての。ったく……雨が面倒だから、そこら辺の雲を吹き飛ばしてしまおうかと思ってな」


「絶対に止めてちょうだい」


ぐいっと顔を近づけられ、そんなアホな真似は絶対にするなと告げられた。


「もうここからはディスタール王国の人たちに見つかってもおかしくないの」


「それはそうかもな。でも、出会って即喧嘩には発展しない……だろ?」


「得体の知れない生物が攻め込んで来たって騒がれるかもしれないでしょ!!!」


空飛ぶ魔物は決して珍しくはない。

ドラゴンはそれなりに珍しいかもしれないが……ディスタール王国の国民であっても、自分たちの街を襲って来ない……もしくは、街周辺に降りてこなければ特に慌てることはない。


だが……その飛行物体、ドラゴンから何かしらの魔法が放たれ、雲が弾けて消えたとなれば……騒ぎが起きるのは目に見えている。

最悪の場合、王都の王室にまで話が届いてもおかしくない。


「分かった、分かった。分かったから顔近いっての」


「本当に解かってるの?」


顔をどけろと言われても、そう簡単には動かない。


仲間でリーダーであるゼルートの実力は非常に信用、信頼している。

性格に関してはやや大雑把なところがあるものの、決して悪人ではない。


ただ、少々おふざけや悪戯が好きな部分がゼロではない。

人に危害は加えてないという理由で、先程口にした行動をサラッとアレナとルウナに相談せずに行っても、なんら不思議ではない。


「本当に解かったって。つか、もう雨雲の上なんだから、そんなことしないっての」


「……本当に止めてちょうだいよ」


この話は一旦ここでお終わった。


しかし、ディスタール王国に入ってからもラルの背に乗って移動する為には、一度降りて国境の門を通らなければならない。

という訳で……風の魔力を超圧縮した爆弾を落とし、するっと地上へ降りた。


(……これは、仕方ないわね)


雨に濡れたくないという事情を考えれば、本当に仕方ない話ではある。


「やっぱり視線は集まるよな~」


金髪の少年を先頭に、美人な人族と狼人族の女性。

その後ろには紅いリザードマンとスライム、そして先程まで彼らを乗せていたドラゴン。


特徴が当てはまる部分があまりにも多く、少しでも戦闘の話を聞いてる者であれば、彼らが誰なのか……絶対に気付いてします。


「は、覇王戦鬼殿たち御一行でよろしいでしょうか」


「……まぁ、はい。その通りです」


ギルドカードなどを見せ、本人であることは確認。


「あの……ディスタール王国には、何をしに」


この兵士の質問に関して、ゼルートは答える義務など無い。

しかし、敢えて兵士の質問に答えた。


「どうやら、ディスパディア家の連中が戦争の結果……というよりは、戦争中の最後の結果に納得がいってないらしくてな」


「さ、さようでございましたか」


「安心してくれ。向こうがバカなことをしなければ、戦争の続きが起きることなんてあり得ないんで」


今回に限って、そのバカなことをする可能性が冒険者と同等の可能性を持つのが貴族であるため、兵士は全く安心出来なかった。

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