少年期[860]成功するイメージを思い浮かべる

「それじゃ、やろっか」


まず初めに、ゼルートはスレンたち以外の十六人と再度模擬戦を行った。


一日や二日で大した変化が起こることはないが、それでも生徒たちはゼルートたちから教わったことを少しでも実行しようと、試行錯誤しながら動く。


その動きに「ちゃんと考えて動こうとしてるな」と、ほんの少し感動を覚えながらも、全ての攻撃を捌いてカウンターを優しく決めていく。


「嘘だろ、強過ぎるだろ」


「いや、戦争を終わらせた人? だぜ」


「それでも……いくらなんでも、って感じじゃねぇか?」


人の実力は見た目だけで決まらないというのは常識だが、それでも自分たちよりも年齢が低く、体格も大きくない少年が噂程強いとは思えない。


ただ……明らかに自分たちより強いという事実だけは、見学に訪れた生徒たちの本能に刻まれた。


「今日はアレナがやってみるか」


「私? 分かったわ」


十六人との模擬戦が終了し、本日スレンたち四人と戦うのはアレナ。

アレナが強いということは四人も理解している為、先日のルウナ戦と同じく、四人は殺すつもりでアレナに挑む。


(先日よりも、思い切りが良いわね。ルウナが挑発したから?)


殺そうとしても殺せない。


ルウナが四人にそのような事を言っていたな思い出し、それが四人の思い切りの良さを引き出している様に感じた。

本当に学生とは思えない強さを持っていると感心しつつも、まだまだそんな四人に負けることはない。


所有している武器は木剣一つだが、ゼルートやルウナに倣って体技も使用し、ゴーランの渾身の一撃をあっさりと掴む。


「なっ!?」


力の緩急を利用し、後方へ押し飛ばしてしまう。


ルウナほどパワータイプには思えなかったこともあり、自分の殺すつもりの一撃をあっさりと止められた事実は、ゴーランにとってかなり予想外な流れだった。


(良い剛剣ね)


予想外の流れに悔しい思いを抱くゴーランだが、手に小さな痺れを感じているアレナは、心の中でゴーランの力強さを褒めていた。


(ゼルートの言う通り、条件さえ合わされば……Bランクのモンスターを倒せるかもしれないわね)


スレンの雷を纏った鋭い突きも、リルとマーレルの魔法技術も目を見張るものがある。

将来、もしかしたら自分よりも早く上へ駆け上るかもしれない。


そう思っても……今は負けてやれない。

先輩として、壁の高さを思い知らせる。


「そこまで」


イーサンの声が掛かり、模擬戦はアレナの完封で終了。


それからは武器を扱う組と、魔法を使う組で指導が別れる。

見学してた生徒たちは……ゼルートが魔法の指導を担当することに驚く。


イーサンのクラスの生徒たちも最初は当然驚いた。

しかし、スレンたちだけは特に驚いていなかった。


何故なら……最初にゼルートが自分たちとは違う……そう思わせる何かを見せたのが、魔法。


「今のは良い感じだったな。けど、もう少し曲げて撃てるようになると、実戦で使いやすくなる」


「はい!! ……でも、今の魔力操作の腕だ、これ以上上手くいくかどうか……」


勢い良くは返事はしたが、素直に今以上攻撃魔法を曲射出来る自信がない事を告げた。


「撃つ前に、しっかいイメージしてるか? イメージするとしないとじゃ、かなり変ってくるぞ」


「イメージ、ですか……分かりました。やってみます」


放った攻撃魔法の軌道変化は本人のセンス、魔力操作スキルの練度によって習得出来る早さ、成功確率は変わってくるが、例えセンスがなくとも特訓を重ねれば、ある程度のところまでは成功する。


そもそも先程生徒が放った曲射も悪くはなかった。

ゼルートが求める完成度が高いというのもあるが、そこまでの域に達すれば、相手がモンスターや人であっても驚きの一手にはなる。


本当はもっと教えたい技術が色々とあるが、焦って教えても生徒の頭がパンクしてしまうだけ。

そこはゼルートも理解しており、リルとマーレル以外には完璧に曲射を行えるように指導した。

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