少年期[859]最高の寝起き

「はぁ~~~……沈む~~~~」


屋敷に帰って風呂に入った後、ゼルートは意識を持っていかれるほど快適なベッドに飛び込み、眼を閉じた。


(明日は、どうしようか)


翌日の授業についてあれこれ考えていると、いつの間にか朝になっていた。


「……最高過ぎるな」


疲れが全て吹き飛んでいると感じ、寝起きとしては最高の状態。

本音としてはもう少し寝ていたが、部屋に飾られている時計を見る限り、その時間はなかった。


(直ぐに寝られて、疲れが取れてるのは最高なんだけど、もっとこう……贅沢を言うと、最高の気持ちを何十分も体験したいな)


ベッドでのぬくぬく気分をもっと感じたい。

なんて贅沢なことを考えながら着替えていると、ドアがノックされた。


「はい」


「ゼルート、起きて……るわね」


「おぅ、起きてるよ。ていうか、何故にアレナ?」


メイドが起こしにくるよりも先に、アレナがいつもの癖でゼルートがしっかり起きてるかを確認しに来た。


「珍しいじゃない。良いタイミングでしっかり起きてるなんて」


「ベッドが最高だったのと、これから仕事があるからかな」


本音は、もっとぬくぬく気分を味わいたい。

しかし……着替えて朝食を食べ終えれば、直ぐに職場である学園に向かわなければならない。


普通に考えれば、憂鬱な時間かもしれないが……今のゼルートには、そんな気持ちなどサラサラなかった。


(前世では学校に行くこの時間が好きではなかったんだけど、疲れが取れてるとこんなにも違うんだな)


職場にストレスの要因となる物がないということもあり、ゼルートの機嫌は朝から好調だった。


専属コックの美味い料理を食べ終え、学園に出発。

本日は歩いていこう……そう思っていたが、迎えの馬車が既に到着していた。


(……お言葉に甘えるとするか)


学園に到着すると、本日の授業内容についてイーサンと打ち合わせ。


「なぁ、ゼルート。戦闘訓練の授業の時、うちの生徒たちを見学させても良いか?」


「えっと、自分は構いませんけど……」


臨時教師であって、本職ではないので担任教師であるイーサンに視線を向ける。


「えぇ、構いませんよ。ただ、下手な言葉を口にするとブレスが飛んでくると注意しておいてくださいね」


「はっはっは!!! 分かった! しっかり伝えておくぜ!!」


ゼルートが「そんな事しない、させんませんよ!!」と言う前に、見学をお願いしてきた体格の良い男性教師は自分の場所に戻ってしまった。


その後、時間になるまでアレナ、ルウナも含めて生徒たちに対するアドバイスについて話し合い、授業の時間が訪れた。


「それでは、授業を始める」


号令が行われ、早速授業がスタート。

座学ではゼルートたちが今まで討伐してきたモンスターの特徴、動きなどを解説。

途中で生徒から問われる内容に答えながら、どのような攻撃、動きで討伐するのが効果的なのか。


それらをゼルート、アレナ、ルウナ。それぞれの視点から説明。

三人の中でルウナの説明はやや大雑把だが、大雑把だからこそ伝わる感性を持つ生徒もいる。


「足止めの道具としては、これをお勧めします」


動きの妨害についての授業では、自作のまきびしを紹介。

この世界でも、別の大陸には存在するが、ゼルートたちの大陸には存在こそ書籍に記されているが、実際に使う者は殆どいない。


「ゴーレムなどの個体には効き目が薄いけど、一般的な生物であれば、まず接触を避けるはず」


左右に移動するのか、それとも跳び越えようとするのか。

いずれにしろ敵の行動を狭めることが出来る為、割とお勧めの品だよと説明。


イーサンも途中途中で別視点からの説明を加え、先日と同じく、生徒たちはいつもより真剣に座学に集中していた。


(ゼルートさんたちが臨時教師を終えた後も、こうやって真面目に聞いてくれるといいんだけどね)


座学の授業があっという間に終了し、次の時間は訓練場に移動。

すると、朝のミーティングで話していた通り、他クラスの生徒たちが見学に訪れていた。

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