少年期[856]普通は死ぬからね
教室に戻り、休み時間を終えてから二限目がスタート。
座学ということもあり、ゼルートは今までの体験談を話していく。
そんな中、ダンジョンの話となり、一人の生徒がゼルートに質問した。
「ゼルートさんが体験したトラップの中で、一番恐ろしかったトラップはなんですか?」
そもそもトラップに引っ掛かることが殆どなかったゼルートだが、ここ最近の中でも……特に強烈だったトラップが記憶に残っている。
「とある一室に跳ばされて、大量のモンスターに襲われるのも中々だったけど……やっぱり一番強烈というか、恐ろしい? って感じたのはコロシアムタイプの転移トラップだな」
コロシアムタイプの転移トラップについては生徒たちも知識として頭に入っているので、全員が何度目になるか分からない驚愕の表情を浮かべる。
「そ、そのコロシアムは何回戦、だったんですか」
「七回戦だ」
サラッと答えるゼルートだが、イーサンも含めてその答えを耳にし、思いっきり固まってしまう。
(解る、解る。本当に良く解る)
アレナは生徒たちやイーサンの気持ちが身に染みて解る為、何度も同意するように頷く。
当然、そこから一回戦一回戦、どんな魔物が現れ、どういった戦い方だったのかを説明する。
生徒たちはギリギリ五回戦までの説明は、真剣な表情で聞き入っていたが……六回戦からは、これまた信じられない、といった表情になってしまった。
「これが、真紅の毛を持つミノタウロスが使っていた斧だ」
アイテムリングの中から、当時真紅のミノタウロスが使っていた斧を取り出すゼルート。
生徒たちはゼルートの体験談を信じていなかった訳ではないが、話に出てくる化け物が実際に使っていた武器を取り出されては、信じるほかなかった。
「これが、キングヴェノムサーペントの牙だ」
そして今度は、七回戦目で戦った化け物の牙を取り出した。
生徒たちは生で見るAランクモンスターの素材に興奮し、一人の生徒が実際に触っても良いかと尋ねた。
その言葉に対し、安全性には問題無いので、ゼルートは生徒たちに触っても良いよと伝えた。
すると、生の波に紛れてイーサンまでこっそり触り始める。
「ってな感じで、超強い魔物ばかりだった。あの時は周囲にトラップある状況で戦ってたからな。問題無いって思ってたけど、うっかり引っ掛かった」
笑って話すゼルートだが、うっかりでもそんなトラップに引っ掛かりたくないと、心の底から思う生徒たち。
「こんなこと言う必要はないと思うけど、トラップを発見したら、なるべくその付近で魔物と戦うようにした方が良い」
ゼルートの言葉に、スレンたちを含めた全員が何度も顔を縦に動かした。
四人の中でも勝気で、強くなりたいという思いが人一倍強いゴーランでも、さすがにそんな凶悪過ぎるトラップには引っ掛かりたくないという思いが強い。
「ただ、そのトラップを乗り越えて得られたお宝は、中々の物だよ」
ランク八のハンマー、列土豪災
ランク七の伸縮、サイズ変化が可能なミスリルデフォルロッド。
ランク八の杖、群滅の聖杖。
そしてランク七のマジックテント(中に多数の家具付き)。
それらのマジックアイテムが入っていたと知ると、先程まで若干沈んでいた生徒たちのテンションが一気に爆上がり。
列土豪災と群滅の聖杖は既に持っていないので、指輪状に変形させているミスリルデフォルロッドを素の状態に戻し、生徒たちに見せた。
恐ろし過ぎる試練を超えて、手に入れたアイテムがランク四やランク五の物であれば、おぉ~~~……というぐらいの反応だったが、さすがに物が物だったため、生徒たちのコロシアムタイプの転移トラップを是非とも打ち破りたいという思いが大きくなった。
「分かってはいると思うけど、Aランクの魔物と連戦なんて、普通は死ぬからね。そこら辺、ちゃんと忘れないようにね」
アレナから有難い忠告を貰い、生徒たちはハッと我に返った。
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