少年期[845]暇つぶしになるか?
特に用もないので、冒険者ギルドから出ようとした二人だが……その前に、EランクやDランクのルーキーに声を掛けられた。
「あの、良ければ自分たちと訓練してくれませんか」
彼らは先程から訓練場で自主練を行い、既に体力を消耗している。
しかし、ロビーに戻ってきたら……なんと、先日の戦争で大活躍したゼルートのパーティーメンバーである、アレナとルウナがいた。
二人の活躍と容姿も広まっているので、彼らは意を決して二人に自分たちと一緒に訓練してほしいと申し出た。
(私は構わないけど……ルウナはどうなのかしら?)
一度Aランクまで登ったアレナとしては、後輩を育てるのも高ランク冒険者の仕事だと思っている部分がある。
ただ、ルウナは本当に冒険者になってから五年も経っておらず、先輩は後輩に……なんて考えはない。
相手が強ければ、模擬戦に付き合うのはありだと考えるタイプ。
とはいえ、ぱっと見た感じ……ルウナが少しでも満足出来そうなルーキーはいない。
「良いぞ。今日は特に予定はないしな」
ルウナの言葉に、アレナは少々驚かされたが……声には出さず、感心した。
(もしかして、後輩を育てるのも先輩の役目、みたいな想いがほんの少し芽生えた?)
強者との戦いが大好物……そんなルウナが成長したな~と思ったが……よ~く表情、眼を見てみるとそんな思いが一ミリもないと解った。
(これは、本当に暇つぶしとしか考えてないわね)
それでも、多少は人として成長してるのだろうと思いながら、二人はルーキーたちと一緒に訓練場へ向かった。
うっかり怪我しない様に体を軽く動かした二人は、早速ルーキーたちとの模擬戦を開始。
「遠慮しないで、思う存分掛かってきなさい」
先輩から言われた通り、前衛タイプのルーキーは木製の斧を振りかぶり、果敢に攻める。
「豪快なのは良いけど、相手は避けるの。だから、もっと動きを予想しなさい」
「はい!!!」
アレナは模擬戦を行うルーキーに対し、的確な指示をその場その場で飛ばす。
そんなアレナに対し……ルウナはどこか冷めた表情で挑んでくるルーキーたちの相手をしていた。
(暇つぶしぐらいにはなると思っていたが……ん~~~、暇つぶしにもならないかもしれないな)
思った以上に、対人戦に慣れてないというイメージを感じた。
「うっ、参りました」
「……避けるか防ぐか、それともカウンターを入れるか。攻撃の際にも、もっと素早く判断しろ」
無言のまま続けようかと思っていたが、隣で色々とアドバイスを飛ばしているアレナを見て、少しは自分も何かルーキーに伝えた方が良いかと思ったルウナ。
こういう事にはあまり慣れていないが、とりあえずそれっぽい事を伝えた。
「は、はい!!!」
ルウナからアドバイスを貰えたことが嬉しかったのか、あっさり倒されたルーキーは元気良く返事をしながら、今度はアレナの列に並んだ。
(……指導というのは難しいな)
二人は適度に武器を変え、ルーキーたちが様々な武器に慣れるように対応。
二人とも普段からコロコロとメイン武器を変える訳ではないが、アレナは元々器用なのである程度斧でも槍でも並程度……もしくはそれ以上に使える。
ルウナはそういった器用さはあまりないが、今まで己の目で見てきた相手の動きを思い出し、それらしい動きを行い……外から見れば、それらしい動きになっていた。
「そろそろ水分補給しなさい。交代制だから体力はまだ大丈夫かもしれないけど、水分がなくなったら本当に動けなくなるわよ」
「「「「「はい……」」」」」」
ルーキーたちは一旦訓練場から離れ、水分補給を腹がたぷたぷにならない程度に行い、補給完了。
二人との模擬戦で、誰一人として良いところがないが……それでも、ルーキーたちの心はとても燃えており、眼は嬉しさなどで輝いていた。
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