少年期[840]無理難題な返し

美味い食事を食べながらも、多くの人間と会話をした。


ルミイルと久しぶりに会ってから、パーティーが終わるまでずっとルミイルと話すわけではなく、途中で会話を終え……また他の者たちとの会話が始まる。


(やっぱり、俺にはこういう場は似合わないな)


何度もになるか分からない同じ感想を抱いた。


そして祝勝会も終わりを迎え、ゼルートは宿に戻った……今日のところは。


「ふぅ~~~、マジで疲れた。料理は美味かったけど」


「同感だな。途中で何度私に話しかけるなと言いそうになったか」


「……頼むから、そういうのは堪えてくれよ」


「分かっている。その辺りは解っているから安心しろ」


あぁいった場でも、ちゃんとゼルートとの迷惑にならない様にという考えは残っている。

なので何度も何度も話しかけてくる貴族たちを無視しなかった。


「私はゼルートがそういった件を起こさないか、少しだけ心配だったわ」


「おいおい、あの場には父さんたちだって居たんだぞ。そんな迷惑掛けるような事さすがにしないっての」


傍に両親が居なければ、そういった件を起こしていたかもしれない……そんな風に聞こえるが、そこはスルーした。


「それは良かった。でも、疲れという感想は私も同じね。まさか、あんなに婚約の話とかがくるとは思ってなかったわ」


「……え、マジ?」


その話は初耳であり、ゼルートは驚きでベッドから上半身を起こした。


「マジよ。いずれは自分と婚約しませんか……みたいな話を何度もされた。勿論、ストレートに言ってくる人はいなかったけど」


「そういえば、私も遠回しにそんな話を言われたような言われてないような……多分、言われたな」


「あらら……二人とも俺と同じ目に合ってたんだな」


当然、ゼルートも将来的に内に娘を婚約者候補にどうだ、なんて話を何回も何十回も伝えられた。


興味がある内の話ではなく、単純に今はそういったことを考えられない。

しかし、あの祝勝会に参加していた貴族たちにとって、そんなゼルートの事情は関係無い。


ゼルートに対して敬意も畏怖も感じている。

だが……やはり根は貴族。

自身の家の権力拡大、もしくは増加という考えが脳にこべりついている。


本日の祝勝会では主に戦争に参加した貴族の当主たちがメインで参加していたので、令嬢たちの容姿は当主たちの口頭でしか伝えらていない。


それでも、仮に目の前にその令嬢たちがいたとしても、自分の興味が惹かれるとは思えない。


「それで、二人はその令息たちになんて返したんだ?」


「私は勿論、ゼルートより強ければ考えると返した」


「私も似たような感じね。ゼルートと一緒に居るより楽しい生活が出来るなら考えるって」


「な、なるほど…………無理難題で返したってことだな」


自分で口にするのは恥ずかしいと思っている。

しかし、ゼルートは自分のことを全能力や武器を含めれば、国を亡ぼせると思っている。


Sランクの魔物が相手でも……数体ぐらいであれば同時に戦えると考えている。


そしてアレナの言う楽しい生活というのは、ある程度刺激がある内容。

ただゴージャスでセレブな生活が出来れば良いとい、一般的なご令嬢たちが望むようなものではない。


なので、その二つを達成するのは……実質不可能。

多くの者がその言葉を聞き、諦めざるを得なかった。


とはいえ……今回の戦争、祝勝会でゼルートだけではなくアレナやルウナたちの容姿、強さなども大々的に広まったため……今後、真面目に二人に求婚する者が現れ、その件にゼルートが巻き込まれる未来も遠くない。


「ゼルートはそもそも好みすら伝えてないんじゃないの?」


「だって、今は本当にそういう事に興味ないんだから、教えたところで意味無いだろ」


なんてことを話していると、ゼルートは宿の従業員から一通の手紙を受け取った。

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