少年期[820]最終ライン、突破

(結構強くなってきたな)


戦争が始まってから、既に数時間が経過。

だが、その間にゼルートが敵国側の兵士や騎士から攻撃を食らうことは殆どなく、向かって来る全ての敵を返り討ちにしていた。


数の多さは基本的に有利に働くが、ゼルートからすれば的がたくさんあって当てやすい。

剣技に加えて、攻撃魔法による遠距離攻撃も可能。

そして氷魔法とフロストグレイブの性能も相まって、敵の動きを拘束することも出来る。


なんでも出来るからこそ、敵はなす術もなくやられていく。


勿論、いくらゼルートでも好きなように動き回っていれば、多少なりとも隙が生まれる。

それはゼルート自身も解っているので、疾風迅雷による身体強化で得た超スピード、詠唱破棄で攻撃魔法を発動して対処している。


ただ、そうまでしても消せない隙というのがある。

隙と呼ぶにはあまりにも小さく、か細い。


しかし一流の騎士や兵士、魔法使いはその隙間を見逃さない。

少しでもゼルートを削り、あわよくば倒そうと……過去一かもしれない集中力を発揮し、その隙を突く。


(僅かな隙を狙える者たちが少し増えてきたな)


だが……ゼルートの従魔であるゲイルがその隙を突く攻撃を見逃すわけがなく、速攻で対処してしまう。


ゼルートならこの攻撃も何とかしています……そんな気持ちがゼロとは言わない。

それでも万が一のことを考えると防いだ方が良いと思い、バッチリ防ぎ、接近戦で狙ってきた者はズバッと斬り捨てる。


ゼルートの僅かな隙を補う。

それを続けていれば、今度はゲイルに隙が生まれてしまうのでは?

話だけ聞いてればそう思う者が現れるだろう。


それを許さないのがゼルート。

お互いに背中を預けながら戦っている為、ゼルートもゼルートでその辺りを気にかけている。


なので、実際のところ二人には隙も死角もないと言える。


特大魔法を二人にぶち当てようと思えば、そもそも周囲の騎士たちが回避しなければならない。

それはそれで動きが読みやすく……加えて、特大魔法の威力が高くても、放たれる速度が遅ければまず二人に当らない。


そして、仮にその特大魔法を当てられる状況にしたとしても、二人の力ならその特大魔法をあっさりとぶっ壊してしまう。


まさに完全無欠。

最前線では二人に対し、かなりの戦力が投入されていた。


敵国であるディスタールとしては、戦争は数日を予定……どんなに早くても、決着は夕方になると思っていた。

しかし蓋を開けてみればどうだ?


初っ端から自軍は大打撃を受け、最前線の二人にどれだけ戦力を投入しても止められない。

数日間の戦闘、準備? 

そんなこと考えてる余裕はない。


他の最前線で暴れている奴らも倒さなければならないが、第一にゼルートとゲイルを倒さなければならない。

それが解っているので強者を投入させるのだが……レベルが違う。


根本的なレベルが違うという訳ではないが、持っている手札が違い過ぎる。

ゼルートの大好きな強化技術である、疾風迅雷。

これ一つで大抵の戦闘者は追いつけなくなる。


仮に追いついたとしても、ゼルートを相手に手に持つ剣だけに集中して良い訳ではない。

どこからでも攻撃魔法が襲い掛かって来る。

なので並ではない強者をどんどん投入しても、数分経てば全滅。


ゲイルも似た様な存在であり、数で潰そうとしても焼け石に水。


そんな今回の戦争において、最強のタッグが……いよいよ最終防衛ラインを突破した。


「ふぅ~~~~、さすがにちょっと疲れたな、ゲイル」


「えぇ、最後の方は厚い壁が増えましたからね」


二人が少々疲れたのは事実。

いくら二人の魔力が増えたとはいえ、途中からは強化系のスキルや攻撃魔法、ブレスなどをがんがん使っていたので、途中で魔力回復のポーションを飲んでいる。


とはいえ、スタミナ的にはまだ問題無い。

そういった状態で、敵の総大将がいる前までやって来た。

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