少年期[807]比較的安全な位置にいれど
「はっはっは!!! やっぱりゼルートはぶっ飛んでるぜ! 俺たちも負けてられねぇ……そうだよな!!!!」
「「「「「「「うぉぉおおおおおおおおッ!!!!」」」」」」」
グレイスの一言で再度、ドーウルスに属する冒険者や兵士、騎士たちの闘争心が更に燃え上がる。
「グレイス、熱くなるのは良いけど、あまり熱くなり過ぎては駄目よ」
「解っている!!!」
妻のコーネリアからの問いにそう答えるが、本当に冷静な感情も持てているのか怪しく感じる。
しかしそこは歴戦の猛者。
修羅場を潜り抜けた回数なら、第一線から退いたガレンよりも上。
しっかりと引き際は弁えている。
「おらおらおら!!!!!」
とはいえ……現状、グレイスの心では冷静さの割合よりも、熱さの割合の方が勝っている。
自慢の魔斧を振り回し、的確に敵の命を奪っていく。
決して力任せの攻撃ではなく、その中には確かな技術が織り込まれている。
「負けてられるかよ!!」
「俺たちもやるぜ!!!」
ゼルートは今までの冒険者人生でドーウルスに居る期間が長く、ドーウルスにはそれなりに知り合いも多い。
そしてその知り合いたちはゼルートやその仲間がとんでもなく強いことを知っている。
自分たちはあそこまで強くなれないかもしれない。
ただ……同じ街で頑張っていた者として、絶対に敵国の者たちに勝つ、ぶっ殺す、攻め潰す。
そういった強気な気持ちで劣ることなく、戦争に挑む。
さすがに「死にたい奴から掛かって来い!!!!」というセリフには少々驚いたが、冒険者になって直ぐにオークキングと対峙し、挑んで勝利した内容を考えれば……そんな強気な態度も納得。
グレイスの言葉もあり、ドーウルス所属の者たちのテンションは最初からクライマックス状態。
(強いというのは出会った時から解ってはいたが……その影響力も大きくなっているな)
戦場には当然、周囲に屈強な騎士たちがいるが……バルスも当然、戦争に参加する貴族として戦場に立っている。
そんな中……やはり自然と感じ取ってしまう。
この戦争、自分たちが負けることは絶対にないと。
(……戦力を考えれば、問題はあるまい。故に、隙となるのはこの緩みだ)
甘え、緩みに染まらず再び帯を締める。
いくらゼルート達が敵を殲滅していこうと、敵国側の兵士や冒険者を全て攻め潰せる訳ではない。
当然後方にも敵は押し寄せてくる。
なので、今回の戦争に参戦した貴族たちも当然……この戦場で戦死してしまう可能性はあるのだ。
「バルス様、安心してください。必ず私たちがお守りします」
バルスの護衛である騎士たちも解っている。
戦争自体には勝利するだろう……ただ、こちら側の死者がゼロなんて事は、絶対にあり得ない。
戦争が始まってから少々時は過ぎ……敵国側の被害は甚大だ。
だが、オルディア王国側の被害もゼロではない。
それをしっかり理解しているからこそ、護衛の騎士たちの表情に油断は微塵もない。
「ふっふっふ……お前たちが頼もしい存在だということは解っている。ただ、私をそこら辺の年寄りと同じ扱いはするなよ」
現在でこそ書類仕事に追われることが多いが、それでもガレンと同じく、肉体の訓練は欠かしていない。
ここ最近は戦争が行われると分かった日から、実戦の勘を取りも出すために野生のモンスターとも命懸けのバトルを行っていた。
「張り切るのは良いですが、あまり無茶はしないでくださいね」
「はっはっは! それは解っておる」
グレイスたちの様に最前線に向かってる訳でもないので、グレイスほど熱さが心を支配してはいなかった。
「……槍を」
「はっ!!」
とはいえ、馬に跨ったまま戦場を傍観するつもりはなく……部下から凡庸的な槍を受け取り、タイミングを見計らってそれを全力で投げた。
狙いは少し離れた位置で自国の兵士たちを押している冒険者。
槍の矛先には岩が纏われており、投擲のスキルで速度もアップ。
狙いの冒険者を討ち取ることは出来ずとも、大きな隙を生み出すことに成功。
兵士たちはその隙を見逃さず、見事急所を貫くことに成功した。
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