少年期[806]物理的に潰される
ここで二人が自分たちにも被害が及ぶことを覚悟で遠距離技を放っていれば……少し結果は変わっていたかもしれない。
「なっ!?」
「ふざ、けるな」
強者との戦いで……なるべく早く終わらせなければいけないと解っていながらも、ブラッソの心は熱かった。
だが、それでも冷静さは全く失っていない。
両手に握る武器を全力で振りながら……後ろに一歩下がった。
その結果、射程が長い槍がギリギリ届かず、当然双剣による一撃も届かない。
「終わりだ」
当ればブラッソといえど、ダメージは免れない。
しかし冷静な判断が攻撃を行いながらも、敵の攻撃をあっさり躱した。
「ぐぅ!!」
「がっ!?」
業物である大剣と棘棍棒に潰され、挟まれ……二人の体は文字通り圧し潰され、更に斬られた。
骨は当然、バキバキに俺てそのまま心臓を突き刺し、終了。
「武器だけは戦利品として貰っておこうか。良い土産になる」
吹き飛ばしてしまった大斧使いの武器だけはさすがに回収不可能だが、ロングソードと双剣、槍はキッチリと回収。
Aランク冒険者四人とブラッドオーガの戦いがここで終わった。
戦いの内容が……とても白熱し、ブラッソが勝ったとしても大ダメージを受けていれば、周囲の敵国側の兵士、冒険者たちはここで止めを刺そうと動いたかもしれない。
目の前の敵など無視し、強大な敵を絶対にここで潰さなければならないと、決死の覚悟で襲い掛かったかもしれない。
だが……結果はブラッドオーガ、ブラッソの圧勝だった。
寧ろ、思いっきり戦意を削がれた。
(な、なんなんだよあの化け物は!?)
(ひ、人が勝てる訳ねぇよ)
(目を合わせたら、死ぬ)
Aランクの冒険者が、自分たちより圧倒的に強い四人があっさり負けた。
四人の攻撃は、全くブラッソに当らず、コテンパンにやられ……文字通り潰されてしまった。
オーガの亜種が弱いわけがない。
それに関しては重々承知している。
ただ……それでも中々現実を受け入れられない者も多い。
そんな中、逆にオルディア王国側の戦意は更に燃え上がっていた。
ブラッソはあっさりと倒してしまったが、戦闘者であればAランク冒険者の実力など嫌でも解ってしまう。
本能的に格が違うと知ってしまう。
そんなはるか先にいる強者を潰してくれた。
この状況……味方として、盛り上がらないわけがない。
実力は足りずとも、次は自分だと思ってしまう。
(ふふ、糧にしてくれればありがたいというものだ)
戦利品を回収し、ブラッソはレミア達の元へと戻った。
「すまない、待たせた」
「全然待ってないわよ。寧ろ、もっと楽しまなくて良かったの?」
「……俺はレミアたちの護衛だ。奴らがレミアを狙っていたとはいえ、私情であまり持ち場を離れて良い理由にはならない」
結果的に早めに気付き、対峙しておいて良かったと思っている。
しかし、正直なところ心の底ではもっとあの四人との戦いを楽しみたいという思いはあった。
「少し見てたけど、随分派手な倒し方だったじゃない」
「……大斧使いをこれで吹き飛ばした、ことか?」
楽し気に会話をしながらも、近づいてくる敵はミスリル製の棘棍棒で力任せに吹き飛ばす。
「それそれ。とても大胆な倒し方だった。あんなの食らったら、体中の骨という骨がバキバキよ」
同じくチラッとだけ見ていた魔法使いや護衛の兵士、騎士たちも同じ感想を抱いていた。
(私たち魔法使いがあんなの食らったら、即死確定よね)
(防御にはそれなりに自信がある方だが、さすがにあの攻撃を食らって生き残る自信はないな)
(ブラッソさんならではの攻撃って感じだったっすね)
攻撃を行った大斧使いは当たり前だが、冒険者の中でもトップクラスの実力者。
防御力もそれなりに高かったが、あっさりと攻撃は潰され、棘棍棒によるフルスイングで骨が粉々どころか、そのまま命を奪われた。
「俺の命を取ろうとしたのだ。しかもレミアの命を狙っていた……そういう死に方も覚悟してもらわなければ困るというものだ」
物理的に潰されて死ぬ。
ブラッソに挑むのは誰であろうと、そういった形で死ぬ可能性があると頭に入れておかなければならなかった。
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