少年期[805]ホームランアタック

「潰れてもらおうか」


ブラッソはここにきてAランク冒険者たちを確実に潰すために、腕力強化のスキルを使用。


「ふんっ!!!!!」


「ぐっ、ッ!!!???」


何も攻撃技を使用していない。


ただただ強化系のスキルを使用した状態で……思いっきり棘棍棒を振り下ろした。


ロングソード使いが使っているロングソードは確かに業物だった。

ブラッソの振り下ろしを腹で受けても、罅が入らないぐらいには丈夫さもある。


ただ、ブラッソの攻撃に対してロングソードは耐えられても……その持ち主は耐えられるのか?


その答えは……否。

ブラッソの一撃をほんの一瞬だけ耐えたが、直ぐに両腕は潰されてそのまま自身の愛剣の腹で潰された。


「ぶ、ぁ」


「次」


残りの面子はここで全てを使い潰すつもりで挑んだ。


元々は超高火力砲台のレミアを潰すために動いていたが、それと同等な程に目の前のオーガはヤバい、ヤバ過ぎる。

レミアは潰せずとも、目の前のこいつだけでも潰す。


殺気の……覚悟の質が変わった。

当然、それにブラッソは気付く。


「良い心地だ」


全身全霊で、ここで力を使い尽くすつもりで強者が自分の命を取りに来る。


とてつもなく……心が昂る。


(もっと遊びたいが、済まぬな)


速く殺さなければいけない。

逃がしてやることも出来ない。


そんな事をすれば、ガレンが属する国の兵士や冒険者たちが殺される。


ゼルートの従魔であり、ガレンの友人であるブラッソとしては……少しでもその要因を潰しておきたい。


「タイタンスレイヤーッ!!!!」


かつてゼルートがコロシアムタイプの罠で対峙した真紅の毛を持つミノタウロスの亜種が使った斧技、タイタンスレイヤー。


自身に反動が返ってくるとはいえ、その一撃はブラッソとしてもあまり食らいたくない一撃。


体格はミノタウロス亜種に劣るが、研鑽を積み続けてきた怪力に加えてマジックアイテム、スキルによる強化。

その一撃はゼルートが対峙した強敵が放った威力に勝るとも劣らない。


仮に……ブラッソがこれを避けてしまえば、他の兵士や冒険者たちが衝撃波でやられてしまう可能性がある。


(正面突破あるのみ!!!!)


ミスリルの棘棍棒に火炎を纏い、その状態でホームランをかました。


「「「「「ッ!!!???」」」」」


その衝撃音は音が止まない戦場の中でも広く響いた。


ただ、その硬直は一瞬。

ブラッソはゼルートに教わった魔力操作による加速を行い、タイタンスレイヤーがその威力を発揮する前に激突。


その結果、大斧の刃が押し返されて顔面をバッサリ。

そして大斧使いはそのまま吹き飛ばされ、まさにホームランボールのように大きく宙を舞い、百メートル以上飛ばされてから地に落ちた。


「はっ!!!」


「ぜぁあああッ!!!!」


しかし、ホームランアタックなど……攻撃の後隙が大き過ぎる。


まだ残っている双剣使いと槍使いはその隙を見逃さず、同時に刃を放つ。


(この程度だと、やはり気付けるな)


暗殺者でも無い者に、闘志や殺気を隠せと言うのは難しい。

知人が二人もやられては、完全に冷静な状態でいるのも困難。


二人が攻撃してくるタイミングが丸分かりのブラッソは片足でジャンプし、二人の攻撃をあっさりと回避。


「「なッ!?」」


まさかあの状態から片足で跳ぶとは思っておらず、顔が驚きで崩れる。


「悔いは残すなよ」


ブラッソは二人のことを完璧に殺すつもりなので、敵としてそれだけは助言を与え、二人との距離を一気に縮める。


そしてゼルートから貰った大剣をアイテムバッグの中から取り出し、二人を側面から攻撃。


着地したその脚で駆け出し、二人との距離を一瞬で縮め……双剣使いと槍使いはどうやって躱せば良いのか、選択を迫られる。


バックステップか、伏せるか、先程のブラッソの様に上に跳ぶのか。


(違うでしょ!!!)


(ここで逃げてどうする!!!!)


二人が選んだ選択は回避ではなく、前に脚を踏み出し……ブラッソへの攻撃。


(見事な選択、勇気だ)


ブラッソは心の中で二人の選択を褒め称えながらも、その命をくれてやるつもりはない。

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