少年期[790]気付いたときには遅い
「……ゼルート、ちょっと気合入り過ぎじゃないかしら」
「初めての戦争ですから、当然ではないでしょうか」
アレナとラルも一気に最前線に跳び、敵兵たちの前に到着。
そして目の前ではゼルートとゲイルが敵兵を棒きれの様にあっさりと倒していた。
「私も初めてなんだけど……いつも通り殺されたらそこで終わりなのだし、気合を入れといて損はないわね」
「ですね」
ラルは人の形態ではなく、いきなり通常のドラゴン状態。
ドラゴンが人の言葉を喋り、冒険者と会話している光景に驚かされるも……大きさがそこまでではないと分かり、兵士や冒険者達も気合を入れ、全力で二人に襲い掛かってきた。
「あちらも、気合十分の様ですね」
口内に雷の魔力を溜め、ブレスを発射。
その一撃で食らった者たちは一発でノックアウト。
雷への耐性がない者は限界がない状態でやられ、掠っただけのものもかなりのダメージを負った。
「ッ!!?? ま、まずは女の方から狙え!!!!!」
雷のブレスで一気に十人以上の戦力が殺された事実に恐れを感じ、兵士の中のリーダー格がまずはアレナを殺すように指示を出した。
その言葉に兵士や騎士も関係無く従い、まずをアレナを殺しに掛かるが……前線の兵士や冒険者のレベルでは、アレナの素の動きにすら対応できない。
「女だからって、嘗められるのは嫌ね」
大勢で襲い掛かってくる敵に対し、アレナはミスリルのロングソードを抜き……綺麗に敵の体を一刀両断。
「……は?」
アレナことを若干嘗めてた敵たちは、複数の敵を一刀で斬り裂かれた現実を目にし……思わず固まった。
「ボーっとしてる暇はないわよ」
間抜けな面をしている敵に近づき、首をチョンパ。
直ぐに子供ドラゴンの力に頼っているだけの敵ではないと理解し、己の全てを出し尽くすつもりで攻撃を行う。
(一対多数の戦いも随分慣れたわね)
敵が決死の表情で襲い掛かってくる状況に一ミリも焦ることはなく、自慢の刃を振るい続ける。
(今のところ、魔力を温存出来そうね)
ゼルートと出会ってから強敵と戦う日々が続き、レベルも上がって魔力の総量も増えった。
一般的な冒険者の中ではかなりの魔力量を持っている部類に入るが、戦場ではなるべく温存しておきたい。
(でも、ここではラルの援護があるのが、本当に有難い)
もう二人は敵兵や冒険者がいる側に乗り込んでいるので、前方後方左右、どこもかしこも敵だらけ。
そうなると、さすがに敵の接近を許してしまう場面があるが……そのタイミングでラルの鋭い雷の槍……ではなく、針が飛んでくる。
見た目だけではあまり強そうに思えない攻撃であり……実際には指から放たれた攻撃。
しかし貫通力に特化し攻撃なので、頭や心臓に当れば一発で敵をノックアウト。
「死ねぇやああああっ!!!!!」
殺気を振り撒きながら大剣に火を纏って襲い掛かる男。
それに対し、アレナはわざわざ武器で受けることなく躱し、その際にわき腹を思いっきり裂いた。
一瞬で死ぬような一撃ではないが、直ぐにそれなりのポーションを飲まなければ死んでしまう様な一撃。
(これで良さそうね)
要領を得たアレナは首や心臓を狙わず、とりあえず食らえば戦闘不能になる一撃を加えることに意識を割いた。
(もっと速く……無駄なく)
自ら動かずとも敵は大量にやって来る。
そんな状況に対して、無理せず動かず……流れるように敵の攻撃を躱し、先程と同じく躱し際に致命傷を与える。
まだ強敵が現れていないので、魔力は使っていない。
しかし戦っている敵からすれば、いきなりアレナのスピードが上がったように感じた。
(良い感じね。今まで……一番、最高に良い動き)
自画自賛できるほどの動きが出来ていたアレナだが……数分も経つと、自分たちに挑む敵の数が若干減ったような気がした。
「あれ? なん、で……あぁ、そういうことね」
敵を斬り裂きながら、何故自分たちに挑む敵が減ったのかに気付いた。
アレナが一撃も攻撃を食わらず、舞う様に敵を斬り裂く姿にビビったということもあるが……敵兵たちはようやく、目の前で暴れるラルが正真正銘の……暴力の化身であるドラゴンであることに気付いたのだ。
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