少年期[791]少なからず上がるテンション

「ふ、ふざけんな!! なんなんだよあれ!!!」


「雷のドラゴンがいるなんて、聞いてねぇぞ!!!!」


「い、嫌だ!! 死にたくねぇ!!!」


ようやく体はそこまで大きくなくとも、目の前で暴れているドラゴンが正真正銘のドラゴンだということに気が付き、怯え始める兵士や冒険者たち。


「戦争なのですから、逃げても無駄だと思いますが」


ラルは背を向ける敵たちに対して、容赦なく攻撃を仕掛ける。

鋭い爪で切り裂かれると、体はバラバラ。


強烈な尾による攻撃を受ければ、抉れるか骨ごと内臓がぐしゃり。


軽いブレスを食らえば、一点に集中しているので体に綺麗な穴ができてしまう。


主人であるゼルートは逃げて別の敵に向かう冒険者たちには攻撃していないが、ラルはそういったことは関係無しに、視界に移る敵国側の者たちをどんどん倒していく。


「どけぇぇぇええええ!!!! 俺が相手だ!!!!!」


「あら、嫌な雰囲気を放っていますね」


とはいえ、敵国の者たちも腰抜けばかりではなく、勝算があっての話だが……勇敢に挑む者もいた。


(実力的には……Bランクの冒険者、といったところでしょうか)


ラルに対して果敢に襲い掛かってきた男は騎士であり、若手ではあるがそれなりに有望な存在。

そして手には竜殺し……ドラゴンスレイヤーの効果が付与されたロングソードを持っている。


ドラゴンの中でもそれなりに上位の存在であるラルだが、自身を殺すのに最も適している武器に対しては、当然嫌悪感を感じる。


(弱くはないのでしょうけど、速さはゼルート様やルウナさんには全く及びませんね)


竜殺しの効果が付与された武器を持つ男がこちらに向かって来ていても、ラルはアレナへの援護を欠かさず行い……男が近づいてくるのを待った。


そして全力の斬撃をサラッと身を躱し、尾の先を心臓に突き刺す。


「ゴハっ!!??」


さすがにきっちり鎧を付けていることもあり、尾には魔力が纏われていた。


突き刺さった尾は心臓を抉り、そのまま体を突き抜けた。


「こんな武器は、こうです!!」


体から尾を抜き、零れ落ちそうなロングソードを尾で広い……全力で敵側に向かってぶん投げた。


尾だと思って油断してはならず、その力は余裕で人体を貫き……切り裂くことも出来る。

そんな力でぶん投げられたロングソードは止まることを知らず、タンクが大盾で止めるまで兵士や冒険者たちを貫き続けた。


「……アレナさん、随分と私たちに挑む敵が、減りましたね」


「そうね……どう考えても、ラルの力にビビってるわね」


「そうでしょうか? アレナさんの華麗な戦い方に恐れを抱いたのかもしれませんよ」


確かにラルの暴れっぷりは、敵側に大きな恐怖を与えた。


ただ……アレナもアレナで綺麗に敵の攻撃を全て躱し、サクッと首を跳ね飛ばすこともあれば……とりあえず動けないように足をズバッと斬っていく。


相手の武器を受け止めることもなく、躱してすれ違い際に斬り裂いてく。


それはそれで敵たちに強烈な恐怖を与えていた。


「ところで……あれは、そういうことよね」


「あれは……そうですね」


少なくはなったが、それでも勇気ある兵士や冒険者が二人に責め続けるが……二人はそれらを軽く対処しながら……上空にいる竜騎士に目を向けていた。


「私たちで潰しましょうか?」


「そうね……ふふ、それはワクワクするわね」


ラルはゼルートの従魔なので、基本的に乗ることはないが……相手が相手。


地上にはゼルートとゲイルのタッグと、ルウナとラームが思う存分暴れているので、戦力的には二人が抜けても問題はない。


「それでは、乗ってください」


更に体を大きくし、ラルの体は完全に子供ドラゴンとは思えないサイズに。

そしてアレナはラルを信じて背を乗り……一気に地上から離れて上昇。


(これは……ふふ、やっぱり少なからずテンションが上がってしまうわね)


ラルは従魔としての力を存分に発揮し、いくら無茶に動いてもアレナが振り落とされない状態。


目の前にはワイバーンに跨る竜騎士が複数。

本当は今からオルディア王国側の竜騎士たちとぶつかり合うはずだったのだが……その前に雷竜帝の娘と元Aランクの冒険者が現れ……容赦なく襲い掛かる。

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